どこまでも高い山がつづく、それはそれは山奥のしずまりかえった山の中でした。
山男はいつも向こうの山にむかって叫びます。
「きっとあしたは晴れるだろうなー」
すると山の向こうから、
「きっとあしたは晴れるだろうなー」
とこだまがかえってきます。
「あしたおれは、山をおりて町へいくぞー」
と叫んだら、
「あしたおれは、山をおりて町へいくぞー」
とこだまがかえってきました。
「町へいったら、酒を買ってくるぞー」
とまた叫んだら、
「町へいったら、酒を買ってくるぞー」
とこだまがかえってきました。
よく朝、山男は山をおりて町へいきました。そして町の酒屋さんへ行って、たくさんお酒を買って、山へもどってきました。
そして夕闇にむかって、
「今夜は、おれひとりで、あびるほど酒を飲むぞー」
と叫んだら、
「おれたちにもすこし飲ませてくれよー」
と順々にへんな答えがかえってきました。
「あれ、誰の声だろう?」
山男がふしぎそうな顔をしながら、
「今夜は、おれひとりで、あびるほど酒を飲むぞー」
ともう一度叫んだら、
「そんなこといわないで、おれたちにも飲ませてくれよー」
と、山の向こうからへんな答えが順々にかえってきました。
山男がおどろいていると、山の向こうからこだまたちが、雲にのってやってきました。
みんなお酒が飲みたそうな顔をしているので、
「じゃあ、いっしょに飲もうじゃないか」
山男は、こだまたちを小屋にまねいていっしょにお酒を飲みました。
こだまたちは、体は小さいけれど、みんなのんべーばかりで、真っ赤な顔をしながら、山男といっしょに一晩中飲んでいました。
よく朝、山男は二日酔いでしたが、いつものように、向こうの山にむかって、
「ゆうべはずいぶん飲んだなー」
と叫ぶと、
「またいつかよせてもらうぞー」
と順々にこだまたちの声がかえってきました。
(自費出版童話集「びんぼうなサンタクロース」所収)
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