田舎の郵便ポストに、ポトンと手紙に投げ込まれました。
お腹の中へ入った手紙がポストに話しかけました。
「お友だちからの手紙ですよ」
読んでみました。
「お元気ですか。わたしはいま海の見える丘の上に立っています。一度遊びにきませんか」
さっそくポストは仕事のことなんかすっかり忘れて、テクテク歩いて行きました。
海が見えてきました。丘の上にポストが立っていました。
「やあ、ひさしぶりだね」
「きみも元気そうだね」
丸一日、友だちとおしゃべりをしたり、浜辺で釣りをしたりして帰ってきました。
あるときは、山の湖のほとりに立っているポストからも手紙が届きました。
「御無沙汰しております。こちらへも遊びにきませんか」
ポストはまた出かけて行きました。
山を登って行くと、見晴らしのよい高原が見えてきました。湖のほとりにポストが立っていました。
「きれいなところだね」
「空気もおいしくて新鮮さ」
小鳥のさえずりを聴きながら、ボートに乗ったり、温泉に浸かったり、のんびり過ごして帰ってきました。
またあるときは、町の映画館のそばに立っているポストからも手紙が届きました。
「面白いSF映画を上映してるから観に来ないか」
さっそく出かけて行きました。
ポップコーンを食べながら映画を観て帰ってきました。
そんなふうにいつも気ままにどこへでも出かける郵便ポストだったので、村の人たちや郵便配達人は困ってしまって、
「どうだろう、あちこち出かけないようにロープでからだを縛ってしまおうか」
とみんな真剣に考えていました。
(未発表童話です)
0 件のコメント:
コメントを投稿