2021年4月30日金曜日

絵と詩 岩山の独房

 

(オリジナルイラスト)


春になって近くの山へ登山に出かけた。
重いリュックを背負って岩山を登っていたとき、
山の頂上からエンジン音が聞こえてきた。
見上げると銀色の宇宙船が着陸していた。
中から二人の宇宙人が出てきて辺りを見回していた。
すぐに俺に気づいて傍へ降りてくると
催涙スプレーをふりかけた。
俺は意識を失って目が覚めたときは岩山の独房に監禁されていた。
登ってきたこの岩山は宇宙人の秘密基地だった。
鉄格子は頑丈でとても逃げられない。
死ぬまでこの中で暮らせというのか。
ある日鉄の扉が開いた。
二人の宇宙人は俺を釈放してくれた。
地球での仕事が終わったのだろう。
すごいエンジン音がすると
宇宙船は大空の中へ消えて行った。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2021年4月20日火曜日

オリジナル童話 モアの鉄船


(オリジナルイラスト)


 ある日、畑で農作業をしていたノアは、空から神の声を聞いた。
「すべての動物と作物を箱船に積み込みなさい。やがてこの地上は大洪水にみまわれる」
 日頃から熱心に神を信じていたノアは神の言いつけに素直に従って、何か月もかかって大きな箱船を作りはじめた。
 近所の人はそれを見ながら、
「ノアは頭がおかしくなった」
といっていつも笑っていた。
 ノアの家の隣にモアという金貸しがいた。
 モアもはじめは皆んなと同じように笑って見ていたが、なんだか心配になってきた。
「もしも本当に大洪水が起きたら、大切な自分の財産を失ってしまう」
 モアは神など信じていなかったが、この村では一番のお金持ちで欲の深い人間だった。
 ある日、船大工を呼んで、大きな鉄の船を作るように頼んだ。鉄の船だったら丈夫で、重い金貨や貴金属をたくさん積めるからだ。
 翌日からモアの家からは溶接の音や鉄板を打ち付ける音が聞こえてきた。
 ノアもモアもいつ来るかわからない大洪水に備えて作業を急いだ。
 やがてその恐ろしい兆候が現れた。
 強風が何日も吹き、雷が鳴りだすと雨になった。
 毎日、雨は降り続き、あちこちの川の水は増水し、やがてあふれ出した。山の木は倒れ、村の畑も家もすべて水に浸ってしまった。
 でもノアとモアは船の中にいて安全だった。
「よかった。神の声は本当だった」
 長雨で増え続ける水は、やがて世界中に広がり海のようになった。人も動物も作物もみんな水に溺れてしまった。
「水が引くまで船の中にいよう」
 ところがノアはあることに気がついた。モアの船が見当たらないのだ。
「どうしたのかな」
 その頃、モアは眠っていた。でも息が苦しくて目が覚めた。
 モアの船は水中にいて、重い金貨や貴金属を積み過ぎたせいで、潜水艦のように水の中をゆらゆら漂っていた。
「困った。これじゃ浮き上がれない。酸欠で死んでしまう」
 でもどうすることも出来なかった。モアの重い鉄船は山の岩の間に挟まって身動きが取れなくなった。
「だれか助けてくれ」
モアはひたすら水の中で叫び続けた。
 そんなことなど知らないノアの箱船は、ただ一艘だけ水の上を漂っていた。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)

(未発表作品)
 


2021年4月10日土曜日

絵と詩 モルグ街の殺人 エドガー・A・ポー

 

(オリジナルイラスト)


 パリのモルグ街のアパートの4階で起こった不思議な密室事件で、二人暮らしの母娘が惨殺されたのである。娘は首を絞められ暖炉の煙突に逆立ち状態で詰め込まれていた。母親は裏庭で見つかり、首をかき切られて胴から頭が取れかかっていた。部屋の中はひどく荒らされていたが、金品はそのままだった。部屋の出入り口には鍵がかかっており、窓も閉まっていた。また多数の証言者が、事件のあった時刻に犯人と思しき二人の人物の声を聞いていて、一方の声は「こら!」とフランス語であったが、もう一方の甲高い声については、ある者はスペイン語、ある者はイタリア語、ある者はフランス語だったと違う証言をする。しかし犯人の一人は意外な生き物だった。

(エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」より)

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)