2024年1月22日月曜日

病気になった王さま

  王さまは重い病気になりました。
おなかが痛いとか、足が痛いとか、歯が痛いとかではなく心の病気でした。若い頃は外に出たり、いろんな人にあって健康そのものでしたが、年を重ねるにつれて外へ出ることもなく、お城に閉じこもってばかりで、頭の中で夢ばかり追っていました。
 あるときそんな王さまに悪霊がとりつきました。悪霊は退屈している人や暇そうに夢ばかり追ってる人が大好きです。
 悪霊は王さまに語り掛けました。
「隣国が、この国を狙っています。早急に兵隊を増員して守らなければいけません」
 王さまはそれは大変だとばかりに、国中から人を呼び集め、国境の周りを固めました。でも国民は納得できませんでした。この国と隣国は昔から大変仲が良く、この国を狙うはずがないからです。でも王さまの命令ですからどうすることもできません。
 あるとき悪霊が王さまにいいました。
「先手必勝です。兵隊をすぐ隣国へ派遣しなさい。そうしないと先にやられます」
 王さまはそれは大変だとばかりに国境の司令官に隣国へ兵隊を出すように命じました。
 司令官の命令で、兵隊たちは隣国へ攻め込みました。ところが隣国の住民たちは、そんなことなど知らず、仲の良い隣国の兵隊たちが久しぶりにあいさつにきたと思って、家に招いて、お茶を出したり、お菓子を出したりしました。 
 けれどもどうも様子が変なので、「これは隣国が国境を越えて攻めてきたのだ」と思って、武器を取って応戦しました。
 どの町でもそんな様子でしたから、この国の王さまにも通達されました。王さまも理由がわからず、本格的に兵隊を出して戦うか迷っていました。
  これらのニューズは戦争を仕掛けた国の国民にも知らされました。
  ある日、そのニュースを聞いたある教会の司祭が、
「王さまは悪霊にとりつかれている」と判断しました。
 この司祭は、医学の知識もあり、これまで悪霊にとりつかれた人をたくさん治療したことがあったからです。
「私が王さまの病気を治してあげよう」
  さっそく王さまのいるお城へ行って、王さまに面会することにしました。召使に連れられて、王さまの部屋へ行くと、王さまは青い顔をしてうわごとをいったりしてベッドで休んでいました。
  司祭はすぐにそばに行って、悪霊を追い払うために、何度もお祈りをはじめました。
 しばらくすると王さまの様子が変わってきました。顔色がよくなり、うわごともなくなりました。最後の祈りが終わるころには、悪霊がすっかり部屋から出ていきました。
「私は何をしていたのだ。誰か教えてくれ」
  召使たちは、王さまの命令でこの国の兵隊が隣国へ攻めていったことをはなしました。王さまは驚いて、すぐに隣国へ攻め込んだ兵隊を退却させました。
  それからは前のように両国は仲良くなりました。