2019年12月30日月曜日

絵と詩 観客ひとり


(オリジナルイラスト)


冬の寒い日、
町へやってきたギター弾きが
公園のベンチに座っていると、
犬が一匹近寄ってきた。
人の姿は見えない。
「今日も稼ぎなしか」
でもせっかく来てくれた
ただひとりの観客のために
静かにギターを弾きはじめた。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)






2019年12月21日土曜日

クリスマスの重労働

「いやあ、今夜も寒いな。雪が降りそうだ」
 そういっているのは、町の教会の塔にぶら下がっている鐘です。ずいぶん古い教会で鐘も相当に古かったのです。
 もうすぐクリスマスなので町の商店街にはクリスマスツリーがキラキラと輝いています。でも昔と比べたら営業している店はほんのわずかです。
「町の風景もずいぶん変わったな。昔はいろんな商店がたくさん並んでいたのに、いまじゃ、ゴーストタウンだ」
 鐘がいうようにこの町の商店街は人通りが少ないのでした。
 深夜のことです。冷たい風が吹いていました。
 ギーーイ、教会の扉を誰かが開ける音がしました。
 眠っていた鐘は目を覚ましました。
「こんな夜中に誰だろう」
 扉を開けて入ってきたのは、二人のホームレスでした。あまりに外が寒いので黙って入ってきたのです。
「よかった。今夜はここで泊まろう」
「ずいぶん静かだな」
 二人は小声で話しています。
「せっかくこの町で仕事をみつけようと思っていたのにどこの店も閉店だ」
「これじゃ、正月に餅も食えないな」
 二人のお腹がグーとなりました。しーんと静まり返った教会の中は別世界です。ステンドグラスがとてもきれいで、まるでお城のようです。
「何か食べるものないかな」
「あるわけないさ。泊まれるだけでありがたいよ」
 いいながら二人は長椅子に座ってただぼんやりしていました。
 二人がウトウトしていたとき、うしろからポンポンと誰かが肩を叩きました。
「あなたたちはここで何をしてるのですか」
 うしろに立っていたのは白髪頭の神父さんでした。
「申し訳ありません。外があまりに寒いので中へ入らせてもらいました」
 神父さんに怒られると思ったのですが、
「そうでしたか、お腹が減っていますね。待っててください」
 そういって神父さんは隣りの部屋へ行くと、食パンと赤ワインを持ってきてくれました。
「これを召し上がりなさい。温まりますよ」
 二人は喜んで食べました。
「ありがとうございます。感謝します」
 神父さんはにっこり笑いながら、
「どうですか、食事を差し上げたのですから、私の願いを聞いてくれますか」
「どんなことでしょう。わたしたちに出来ることならなんでもしますよ」
 神父さんはうなずきながら、
「この教会はずいぶん古くて、あちこちガタがきています。床はギーギー鳴るし、壁も剥がれてずいぶん汚れています」
「そうですか、じゃあ修理をしますよ」
「お願いします。大工道具は倉庫にあります。クリスマスが来る前に直したいのです」
 さっそく二人は作業をはじめました。
 ギーギー鳴る床と壁の張り替えをやりました。
 作業が終わったのは明け方でした。
「神父さん、修理がおわりました」
「ご苦労さまでした。それじゃ、祭壇の床もお願いします」
「まだ傷んだところがあるんですか」
「はい、ずいぶん古い教会ですから」
 二人は作業が終わってほっとしたのですが、また神父さんに頼まれたのでやることにしたのです。
 カタン、ガタン、トントントントン、二人は汗を流しながら働きました。
 夕方、作業はおわりました。
「ありがとうございます。音がしなくなりました。お腹が減ったでしょう」
 神父さんはまたワインと食パンを持ってきてくれました。
 二人はすぐにたいらげました。
「神父さん、作業も終わったので、これでおじゃまします」
 ところが神父さんは、
「まだやってもらうことがあります。ステンドグラスを磨いてください。何年も磨いてないのでほこりがたまっています」
 二人はだんだん疲れてきたのですが、食べ物をもらったので仕方なくやることにしました。
 ゴシゴシ、ゴシゴシ、ガラスを磨きながら、二人は小声ではなしました。
「ワインと食パンもらっただけで、ずいぶんこき使われるな」
「これだったら、ビルの窓ふきのバイトの方が賃金がいいな」
「クリスマスまであと何日だっけ」
「あと二日だ」
「じゃあ、辛抱してがんばるか」 
 二日後、クリスマスイヴになりました。
 二人が教会から出て行こうとしたとき、神父さんがやってきました。
「忘れていました。塔の鐘のサビを落としてください。いい音がしません。ロープも取り換えてください」
「え、まだやらないといけないんですか」
「作業をしてくれたら、ワインと食パンのほかにハムも付けてあげますよ」
 せっかく教会から出て行こうと思っていた二人は、がっかりしました。
「やれやれ、とんだ教会へきてしまったな」
 二人はぶつぶつ文句をいいながら作業をはじめました。
 夕方、作業が終わると、神父さんがやってきて、
「これが最後です」
といって、教会の外のモミの木にクリスマスツリーを飾らせられました。
 二人はくたくたになって作業をやりました。
 クリスマスがやってきました。
 すっかり教会の中はきれいになりました。塔の上の鐘もぴかぴかに磨かれてごきげんです。
「さあ、信者さんを呼びましょう」
 神父さんは、取り換えられた新しいロープを握って、カランコロンと町中に響くように鐘を鳴らしました。
 鐘の音は、重労働ですっかり疲れてこの町から出て行く、二人のホームレスの耳にも聴こえてきました。


(オリジナルイラスト)


(未発表童話)





2019年12月10日火曜日

絵と詩 羽の生えたケーキ


(オリジナルイラスト)


村のケーキさんは忙しい。
もうすぐメリークリスマス
朝からケーキ作りに追われて
寝る暇もない。

村のあちこちから注文が殺到。
ひとりで作っているのでああ忙しい。
ところで雪は大丈夫か。
去年は大雪でずいぶん苦労した。

そこで思いついたのがケーキに羽をつけこと。
ラジコン式の羽だからどこへでも配達できる。
大雪が降っても困らない。 
出来たケーキが次々に空へ飛んでいく。
ぷんぷん甘い匂いをさせて。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)





 

2019年11月30日土曜日

絵と詩 ある村の結婚式


(オリジナルイラスト)


日曜日の朝、村の教会で結婚式が行われた。
教会の鐘がカランコロンと響く中
若いカップルが、みんなに祝福されて
新婚旅行へ出かける。
この村では気球に乗って、
空の旅行をするのが習慣だ。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)





2019年11月19日火曜日

創作昔話 山小屋の悪夢

 むかし、ある村に、変わったお百姓がおった。まだ若いのに畑にも出ないで、家の中でぼんやり一日を過ごしていた。
 仕事をしないから暮らしは貧しかったが、まったく平気だった。
 そんなある日、お百姓は旅へ出ることにした。
「山を越えて、あちこちの村へいってみよう。何か面白いことがあるだろう」
 旅支度をして、さっそく出かけていった。
 山を五つ超えたとき、夕方になった。
「どこかに家はないかな」
 みると林のそばに山小屋があった。木こりの家らしい。
 お百姓は今夜泊めてもらうことにした。
「だれかいませんか。旅のものです」
 すると、小屋の戸が開いて、白髪あたまのばあさんが出てきた。
「どこからきなさった。さあ、中へお入り。じいさんは用があって今夜は帰らん」
 親切なおばあさんで、シイタケやキノコの入った山菜なべをごちそうしてくれて、部屋もかしてくれた。
 深夜、眠っていたとき、となりの部屋から物音が聞こえた。明かりがついているので、おばあさんが仕事をしているらしい。
 寝床を出てそっとふすまを開けてみた。
「わっ!」
 思わず声を出してしまうところだった。そこにいたのは人間の身体くらいある大蜘蛛だった。
「へっ、へっ、へっ、ひさしぶりに肉が食える。毎日山菜ばかりでは身体がもたん」
 ひとり言をいいながら大蜘蛛は二本の足で、器用に包丁を研いでいた。
「早く逃げないと食べられる」
 だけど部屋には窓もないのでどこからも逃げられない。
「用で出かけたじいさんが頼りだ。早く帰ってこないかな」
 思いながら寝ずにふとんのそばでじっと座っていた。
 明け方近くになり、となりの部屋の明かりが消えた。
「大蜘蛛は眠ったのかな」
 ふすまの戸を開けてのぞいてみた。誰もいなかった。
「いまのうちに家から逃げよう」
 玄関へいくとき、天井から糸が垂れてきて黒い影が現れ、影はすぐにお百姓の上に覆いかぶさった。
「ぎゃ、たすけてくれ」
 お百姓の声が家中に響いた。しばらく何かと格闘していたが、やがて静かになった。
 昼頃、となりの山小屋に住んでいる木こりがやってきた。
「すまんが水を一杯もらえんか」
 おばあさんが小屋から出てきた。
「ああ、どうぞ。いつもいろんなものをもうてすまんです」
 木こりはぐいっと水を飲みながら、
「どうじゃった、この前もってきたシイタケとキノコの味は」
 おばあさんは困った様子をしながら、
「おいしかったけど、食べるとなんかへんな幻覚をみるようじゃ」
「へえ、そうかいな」
「ゆうべ旅の人が泊まったんじゃが、なんか様子がおかしんで、いま部屋で寝ていなさる」
「そりゃ、たいへんなことしたな。これからはよく調べてからもってくるわな」
 部屋で寝ていたお百姓は、その日一日幻覚に悩まされたが、次の日には元気になって、山小屋から出て行った。


(オリジナルイラスト)


(未発表作品)





2019年11月9日土曜日

絵と詩 コウモリ人間になって



 
コウモリ傘を持って町を歩いていたら
いつのまにか羽が生えてコウモリ人間になった。
「これは面白い。空を飛んで映画を観に行こう」
裏通りをふわふわ飛びながら映画館のある方へ向かった。
看板が見えた。封切り映画『コウモリ人間の恐怖』
ジュースを飲みながら夕方まで観ていた。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)





2019年10月30日水曜日

歩く雲

  真夏の暑さで、頭がぼーっとしていたのだ。エアコンのない蒸し風呂のような部屋で昼寝をしてたら、巨大な雲が地面まで足を伸ばして町の中を歩いていた。形はクモそっくりだった。
「どこへいくんだろう」
 窓からじっと見ていたら、雲と目が合った。「まずい」
 雲が家に近づいてきた。大きな身体で家に覆いかぶさった。
 家がガタガタ揺れた。周りは何も見えない。そのまま雲の中へ家ごと吸い込められた。
「大変だ。逃げよう」
 でも地面まで50メートルの高さはある。飛び降りることはできない。
 そのうち雲は歩き出した。山の方へ歩いて行った。
 家が傾斜しているので山を登っているのが分かった。雲の中で揺れながら周りがひんやりしてきた。やがて頂上へやってきた。ドカンと音がして山のてっぺんに家を置いた。
 雲の中から誰か降りてきた。
「コノイエ ドウスルツモリダ」
「ナカヲシラベタイ ナニカアルニ チガイナイ」
 その声は宇宙人だった。
 二人の宇宙人が玄関の戸を開けて入ってきた。おれは押入れの中へ隠れた。
「ダレモイナイミタイダ」
「キタナイ ヘヤダナ。ゴミダラケダ」
 宇宙人たちは、タンスの中を開けたり、机の引き出しを開けたり、何か探している。パソコンを見つけると電源を外して運び出した。
「コレヲ アトデシラベヨウ」
 宇宙人たちは、ほかに何もないのがわかると家から出て行った。
 山のてっぺんに洞穴があり、宇宙人たちが入っていった。おれもあとからついていった。
 洞穴の中にエレベーターがあり、地下はずいぶん深かった。この山の内部は宇宙人たちの秘密基地だった。
 地下にいろんな部屋があり、どれも倉庫だった。町から盗んできた物がたくさん入れてあった。
 廊下の向こうから宇宙人が歩いてきた。
「アシタ ガソリンヲウバイニイコウ。キュウユガオワッタラ イヨイヨキカンダ」
「ナツカシイホシヘ カエレル」
 翌日、雲の宇宙船は町へ行ってタンクローリーを10台くらいうばってきた。
 すぐに宇宙船にガソリンを給油してエンジンをかけた。
「宇宙へ逃げるつもりだな。町へ行ってみんなに知らせよう」
 急いで山を降りてみんなに知らせに行った。でもだれも信じてくれなかった。
 途方に暮れていると、空の上をクモの形をした宇宙船が空の彼方へ飛んで行った。
宇宙船の窓から二人の宇宙人の顔が見えた。
 そのとき目覚まし時計のベルが鳴った。
「変な夢をみたものだ。さあ、バイトへ出かけよう」
  勤めている近くのガソリンスタンドへ歩いて行った。今日は遅番だった。



(オリジナルイラスト)


(未発表童話)