2018年12月30日日曜日

風船気球でワカサギ釣り

 冬になり山は雪ですっかり覆われました。山の湖は厚い氷が張りワカサギ釣りのシーズンです。でも今年は大雪で山道は通行止めです。楽しみにしていたワカサギ釣りにいけません。
「困ったな、なんとか山の湖にいける方法はないものか」
 いろいろ考えながら釣り人はいいことを思いつきました。
「そうだ。風船気球を作ろう」
 思ったらすぐに行動する人だったので、さっそく材料を集めることにしました。
玩具店へ行って大量の風船を買ってきて、ヘリウムガスも購入しました。
「ゴンドラは竹が軽くていい」
 竹藪へいって竹を切り、その竹に色を付けてゴンドラを作りました。
 ある日、風船にガスを入れて空へ飛び立ちました。
 山に向かって風が吹いていたので、風船気球はスムーズに飛びました。
 雪の積もった田畑の上を飛びながらやがて山の斜面までやってきました。
「さあ、頂上まで登ろう」
 水の入ったビニール袋を何個か落とすと、風船は軽くなってふわふわ登って行きました。風に流されないように釣り竿を雪の壁に差し込んで登りました。
 やがて頂上が見えてきました。
「わあ、すごい、見渡す限り氷の世界だ。さあ、釣ろう」
 氷が張った湖に着陸して、さっそく準備をはじめました。
 手動ドリルで氷に穴をあけて、糸を垂らしました。
 一日釣りをして、バケツ一杯の魚を釣り上げました。
「そろそろ帰ろうかな」
 ところがなんだか空模様が怪しいのです。風が強くなって雪が降ってきました。みるまに猛吹雪になりました。
「これじゃ、風船を飛ばせられないな。どうしよう」
 仕方がないので今夜は氷の上でキャンプをすることにしました。
 ストーブがないので、ほかほかカイロだけで我慢しました。
 夜中にお腹が減って目が覚めたので、釣った魚を何匹かコンロで焼いて食べました。
 ところが朝、起きると風船がありません。風で飛ばされたのです。
「困ったな。山から降りられない」
 なくなった風船を探しに行きました。しばらく行くと山の斜面の木の枝に風船が引っかかっていました。
「あれだ、あんなところまで飛ばされたんだ」
 さっそく歩いて行きました。
 ところがびっくりしました。風船のそばに熊がいるのです。
木のそばに洞穴が見えました。冬眠中の熊が風船の音に気づいて目が覚めたのです。
「どうしよう。なんとか熊を追い払うことはできないものか」
そのとき熊と目が合いました。魚を入れたバケツを持っていたので熊が近づいてきました。マタギみたいに猟銃を持っていないので逃げるしかありません。
「助けてくれ!」
 声を張り上げながら逃げました。風船のことなど頭にありません。熊はだんだん近づいてきました。
 山の斜面を転げ落ちながら、逃げ続けました。
 そのとき空の上からプロペラの音が聞こえました。ヘリコプターでした。この山の近くでなだれが起きていたので見回りに来ていたのです。
「おーい、助けてくれ」
 ヘリコプターはすぐに釣り人を見つけて、ロープを投げてくれました。
すぐにロープにつかまって助けてもらいました。でも釣った魚はぜんぶ熊に取られてしましました。



(オリジナルイラスト)





(未発表童話)





2018年12月16日日曜日

豪雪にあったサンタクロース

 あしたは楽しいクリスマスイブです。サンタクロースのおじいさんは、山の家の中で、子供たちに贈るプレゼントを袋の中に詰めたり、トナカイに餌をやったり、橇の点検をしたり大忙しです。
「あしたは富山、石川、福井を回らなければいけないんだ。でも雪の予報だな」
このサンタクロースは今年は北陸3県を担当することになっていました。
 週間天気予報を見ても雪マークでいっぱいです。でも仕事を休むことはできません。
 翌朝、目を覚ますとびっくりしました。
「なんだあ、この雪は」
 昨夜のうちに、大雪が降って家の屋根まで雪が積もっています。これでは外に出られません。
「早く雪をかいて、出発しないと今日中に回れない」 
 窓も開かないので、部屋の煙突から外へ出ました。
「家の雪かきは後まわしにして、問題は小屋の橇を出すことだ」
 小屋へ行ってみました。小屋も雪で埋もれて見えません。
「早く出そう」
 スコップを持ってきて雪をかきはじめました。
しばらくして、小屋の扉が見えてきました。小屋の中は静まり返っています。
 扉を開けてみました。
 二頭のトナカイが半分凍ったようになって藁の中にうずくまっていました。
「大変だ。凍死する前に、生き返さなければ」
 家に戻って、ミルクを沸かして持ってきました。
「さあ、これを飲むんだ」
 トナカイの口の中に温かいミルク流し込みました。
 しばらくするとトナカイは意識を取り戻しました。全身マッサージもしてやって、元気になりました。
「さあ、早く出掛けよう」
 小屋から橇を出して、サンタクロースは雪の道を滑って行きました。村々を通り、やがて富山の町が見えてきました。
 町に入ると、除雪のために道路は渋滞して、なかなか先に進めません。
「困ったな。まだたっぷり仕事が残っているんだ」
 こんなときは空を飛んだりするのですが、雪が強まって視界が悪く、電線にひっかかったり、電信柱にぶつかったりする危険があるのでそれも出来ません。
 横道に入ったりしながら家々を回りました。
 富山を回り終えて、次は石川に行きました、ここでも国道は大渋滞でした。
「ダメだ、高速道路で行こう」
 北陸自動車道は雪で通行止めでしたが、自動車が走っていないので橇でスムーズに行けるのです。料金所のガードを飛び越えて、中へ入りました。
「さあ、急いで行こう」
 風が冷たくて寒いので、ときどきパーキングエリアに入って、自動販売機コーナーでホットコーヒーを買って飲んだりしました。
 家が見えてくると、高速道路の塀をジャンプして乗り越えました。
 国道を走りながら、町へ行ったり、山へ行ったり、海辺の町へも行ってプレゼントを配りました。
 夕方になると、次の寒気が入ってきて猛吹雪になりました。
 視界が悪く、対向車とぶつかりそうになったので、ランプに火を灯して走りました。
 福井を無事に回り終えると、また高速道路で帰ることにしました。石川を走っていたとき高速道路沿いに温泉があったので、そこへ行くことにしました。
 暖かい温泉にゆっくり浸かって、マッサージもしてもらい一日の疲れをとりました。そしてまた高速道路で帰って行きました。
 今年のクリスマスは大雪のために、ずいぶん苦労しましたが、予定どおり北陸3県を全部回ることが出来ました。
 仕事を終えて家に帰って来たのは明け方でした。
 山の家もずいぶん雪が積もっていて、雪かきが大変でした。
「来年のクリスマスは晴れだったらいいなあ」
 ようやく雪かきが終わって食事を済ませると、サンタクロースは死んだように眠りにつきました。



(オリジナルイラスト)




(未発表童話)





2018年12月10日月曜日

絵と詩 雲の朝食




 雲だってお腹が減るんだ
 いろんな形に変わったり
 いつも動きまわっているから
 きっと朝食も必ず食べるだろう。

(色鉛筆、パステル、水彩画 縦25㎝×横18㎝)





2018年11月30日金曜日

危険な発明家

 町はずれに一軒の家があった。家には発明家がひとりで住んでいた。半年前まで服役していたが、出所してから引き続きロボットの制作をしていた。
 子供の頃からアイディアマンで、誰も思いつかないようなユニークなロボットを作っていた。
「今度は犬ロボットと猫ロボットだ。人口知能を取り入れたものだから、きっと役に立つ」
 毎日制作に励んで、ある日完成させた。
「このロボットを働かせて、のんびり楽して暮らそう」
 ある夕方、猫ロボットを呼んで指示を与えた。
「いいな、教えたとおり、夕飯のおかずをもってくるんだ」
 猫ロボットは家からすばやく出て行った。
 近所をまわりながら、夕飯の匂いを嗅いでいたが、一軒の家の塀を乗り越えると庭へ侵入した。
 開いた窓の中を覗くと、食卓に刺身のパックが置いてある。猫ロボットはすばやくパックをくわえるとその家から出て行った。
「いいこだ。よくやった」
 しばらくすると、犬ロボットが帰ってきた。
 犬ロボットに指示したのは、お米屋さんへ行って、主人がいないときを見計らって2キロのお米の袋をくわえてくることだった。 
 犬ロボットは指示どおりお米の袋をくわえてきた。
「よくやった。これで今夜の食事は整った」
 次の日も二匹のロボットをデパートへ行かせて、食料品を中心に持って来させた。
 ある日、ハトのロボットを数羽作った。空を飛ばせるので難しかったがやっと出来た。
 ハトたちを呼んで、
「いいな。デパートへ飛んで行って、石鹸とシャンプーとタオルを持ってくるんだ」 
 ハトロボットはいわれたとおり、デパートへ飛んで行くと、お客のあとからデパートの中へ入っていった。
 生活必需品のコーナーへ行き、商品棚から石鹸、シャンプー、タオルをくわえると、出口へ行き、お客のあとから出て行った。
「よくやった。これで風呂にも入れる」
 ロボットたちは、男の好みをすっかり学習していたので、食べ物なら肉よりも刺身や焼き魚、お米ならコシヒカリやヒノヒカリなどを持ってきた。
 ある日、犬ロボットがスーパーからお米の袋をくわえて、交番の前を歩いていたとき、中から警官がそれを見つけて、
「あの犬、どこへ行くんだ、あやしいな」
 最近、デパートやスーパーで万引きが相次いで起きていたので、同僚と一緒に犬のあとをつけて行くことにした。
 犬ロボットは、人間の職業について何も学習をしていなかったので、うしろから警官がついてきても知らん顔だった。
 犬ロボットは町はずれの一軒の家の中へ入って行った。
 警官は玄関のチャイムを鳴らした。
「どなたですか」
「交番の警官だが」
 男は驚いて玄関の戸を開けた。
「変な犬がここへ入るのを見た」
「変な犬って、どんなですか」
「お米の袋をくわえた犬だ」
 そのときさっきの犬が現れた。
「この犬だな」
 犬はしばらくおとなしく座っていたが、おもむろに立ち上がると、警官のピストルをくわえようとした。
「こいつ、やめんか」
そのとき猫ロボットとハトロボットが部屋から飛び出してきた。
 もうひとりの警官のピストルも奪おうとした。
 男は今度はピストルを奪って銀行強盗を企んでいたのだ。
 犬も猫もハトも指示に従ったのだ。
 男はすぐに逮捕されて、また服役することになった。



(オリジナルイラスト)



(未発表童話)





2018年11月16日金曜日

袋を背負った男

 町へサーカスがやってきて興行をやりました。町の人は珍しいので喜んで観に出かけました。でも最近は昔と比べるとどこの町でも客の入りが悪いのです。
 団長は困った様子で、
「いかんな。もっとお客が喜ぶような芸をやらないと採算が取れない」
 その日の夕方のこと、サーカスが終わったあと、見知らぬ男が団長の部屋の戸をノックしました。
「だれだい、お入り」
 部屋に入ってきたのは、背中に袋を背負った男でした。
「こちらでお売りしたいものがあるんですが」
「何を売りたいんだね、別に買う気はないが」
 男は続けた。
「このサーカスには芸人さんは何人いますか」
「13人だが」
「動物は何頭ですか」
「クマ3頭、ライオン2頭、ヒョウ1頭、馬4頭、象2頭だ」
「ありがとうございます」
「それがなんだね」
 団長はめんどくさそうにいった。
「じつは薬をお売りしたくてまいりました。この袋に入っている薬を飲めば、芸人なら体力が2倍以上、動物ならば3倍以上増強するのです」
「ははあーん、薬屋か。そんな薬など聞いたことがない」
「でもこの薬は本当によく効くのです。試しに飲んでみますか」
 団長はそんな薬があるわけがないとしばらく疑っていましたが、男がしつこく勧めるので飲んでみることにしたのです。
「じゃあ、試しに飲んでみよう」 
  男はポケットから粉薬と握力計を取り出しました。
「薬を飲む前に、これを握って下さい」
「どれ」
 団長は握力計を握ってみました。針が真ん中で止まりました。
「では、これを飲んでからもう一度握って下さい」
 団長はコップに水を入れると、薬と一緒に飲みました。そして握力計を握ってみました。
 すると、驚いたことに針が最大値を示して止まりました。
「いや、驚いた。信じられん」
「どうですか、申し上げたとおりでしょう。1袋で2倍、2袋で4倍に増強します。2週間は効果があります」
「わかった、使ってみよう。値段はいくらだ」
「はい、20袋で1万円」
「高いな、そんな高いものは買えん」
「ぜんぜん高くはありません。これからの稼ぎのことを考えたら、タダみたいなものですよ」
「でももう少し安くならないか」
「お売りする値段と数量は社の方で決まっておりますが、はじめてということなので、じゃ、初回分だけ9000円。これ以上はまけられません」
「そうかい、じゃあ。とりあえず前金半分だけを払うよ。残りは効果をみてからだ」
「承知しました。じゃあ前金を」
 話が決まると、団長は粉薬を25袋買いました。芸人と動物たちに飲ませる分でした。
「では2週間後に、またお邪魔させていただきます」
 男はそういって帰って行きました。
 翌日、団長はゆうべ男から買った薬をサーカスの芸人たちと動物たちに飲ませました。
 すると、その日からテントの中では、これまでにない大変な賑わいになりました。
 いままでひとりの男をぶら下げてブランコを漕いでいた芸人が、二人をぶらさげて曲芸をやりました。重量上げの芸人も、2頭のクマを軽々と持ち上げました。
 ライオンとヒョウの火の輪くぐりでは 3頭が2メートル以上の高さまでジャンプして見事にくぐり抜けました。曲馬芸では馬の走るスピードがものすごく速く、その上でピエロが縄跳びで三重飛びをして観客をびっくりさせました。
 ですからサーカスは毎日大盛況で、その噂を聞いてとなり町からもお客がたくさんやってくるようになり、売り上げも相当に伸びました。
 懐が温かくなった団長は、仕事が終わると、芸人を連れて町のあちこちへ飲みに出かけました。
「やっぱり、あの男の薬は効果があった。こんなことだったら、もっとたくさん買えばよかった。でもやっぱり1万円は高すぎる」
 2週間後のある夜、団長の部屋へ袋を担いだ男が入ってきました。
「どうでしたか、薬の効果は」
「いや、驚いた。あんなに効くとは思わなかった」
「では、残りのお金をいただきましょう」
 団長はお金を払ったあと、
「どうだね、もう少し安い値段で薬を売ってくれないか。そしたらもっとたくさん買うから」
「いえ、お売りする値段と数量は社の方で決まっておりますから」
「そんなこといわないで売ってくれ」
「いえ、駄目です」
「どうしても駄目かな」
「はい、いくらいわれてもです」
「そうかい、そんなら仕方がない」
 団長は誰かを呼ぶように手を叩きました。
 となりの部屋から筋肉隆々の大男の団員が出てきて、男を縛り上げました。
「何をするんですか」
「どうだい。売る気になったか」
 男は苦しそうに、
「やめてください。いくらいわれてもお売りすることはできません」
 団長は男の袋を取り上げました。
「この中にたくさん薬が入っているんだな。ケガをしたくなかったら、安い値段で全部売ってくれ」
「駄目です」
「そうかい、じゃあ、仕方がない。タダでいただくよ」 
 団長は袋の紐をほどこうとしました。
「待ってください。その袋を開けてはいけません」
「そういわれるとますます開けたくなるもんだ」
 団長は紐をほどいて、袋を開けました。
 すると、大変なことが起きたのです。それは一瞬の出来事でした。
 団長も大男も袋の中に吸い込まれたのです。いえ、それだけではありません。サーカスのテントも、芸人も、動物も檻もすべてです。
 気がつくと、その場所はなにもない空き地の中で、男がただひとり立っていました。
「ああ、あれほどいったのに」
 男は、残念そうな顔をしながら、袋の紐を結んでどこかへ立ち去って行きました。



(オリジナルイラスト)




(未発表童話)





2018年11月10日土曜日

絵と詩 読書




 誰が本を読んでいるのかなと思ったら
 それは木だった。
 何百年も生きるから
 たくさん読めるな。

(色鉛筆、パステル、水彩画 縦25㎝×横18㎝)




2018年10月29日月曜日

いろんな実がなる木

 植物学者で発明家のK、M氏は、長年の研究の末、いろんな実がなる木を作った。それは果物だけではない、野菜もできるのだ。
「ああ、この木が一本あれば毎日の生活に困らない」
 家の中で育てれば一年中収穫できる。
 半年後には、短期間で成長させる肥料も完成させた。
「今年の学会に発表しようかな」
 K、M氏は満足そうにつぶやいた。
 ある日友人の魚類学者で発明家のH、Y氏がやってきた。
「とうとう出来たんですね」
「ああ、でも味の方はわからない」
「じゃあ、一緒に食べましょう」
 二人は食べた。
「美味い。成功ですよ」
「よかった、長年の苦労が実った」 
 友人は祝福して帰って行った。でも、H、Y氏は心の中はそわそわと落ち着きがなかった。
 家に帰るとすぐに研究室に入った。研究室の中には大きな水槽がいくつも置かれていた。
「さあ、おれも早く完成させよう」 
 H、Y氏が研究しているは、水槽の中でどんな魚でも育てることが出来るものだった。いや、魚だけではない。タコやイカなどの軟体動物も育てることが出来るのだ。方法は簡単だった。卵を入れてさえ置けばいいのである。でも短期間で成長させる薬の開発はまだだった。
「ああ、K、M氏が完成させた肥料の秘密が知りたい」
 ある日いいことを思いついた。
「そうだ、明日はK、M氏の誕生日だ。ウオッカを飲みながら誕生日を祝ってやろう。酔いつぶれて眠ったあと、研究室に忍び込んで実験ノートを覗いて観よう」
 翌日、電話を入れてからK、M氏の家に行った。
「ありがとう。研究が忙しくて誕生日のことなんかすっかり忘れていたよ」
 その夜はポーカーをしながら一緒に酒を飲んだ。カードをめくりながら会話は研究のことに移っていった。
「先生の肥料はずいぶん効果があるんですね」
「いや、まだ完成品とはいえない。でもあの肥料のおかげで3倍~5倍は早く収穫できるようになった」
 話しながらK、M氏はあくびをはじめた。実はウオッカに睡眠薬を入れておいたのだ。
 K、M氏がすっかり眠ってしまうと、H、Y氏は、研究室に入り実験ノートを探した。ようやく見つかると、重要な部分を書き写した。
「ああ、これで肥料の成分がわかる。これをヒントにして作ろう」
 朝になり、H、Y氏は帰って行った。
 何も知らないK、M氏は二日酔いの頭でいつもの研究をはじめた。
 1ヶ月後、短期間で成長させる薬を完成させたH、Y氏は、さっそく試すことにした。いくつもの水槽の中に薬品を入れていった。
「ああ、明日の朝には効果が現れるはずだ。楽しみだ」
 思った通りだった。翌朝水槽の中を観ると、卵がかえって10センチくらいの魚が泳いでいる。ほかの水槽を観ても同じだった。
 ある日、K、M氏から電話があった。
「H、Yくんか。いま学会の研究発表会場にいるんだが、今度の研究がどうやら最優秀研究として学会誌に掲載されるそうだ。長年の研究の成果が認められるわけだ。完成論文はあとから作って送るよ。学会が終わったら、四、五日こちらで遊んでくるよ」
「ほんとうですか、それはおめでとおございます」
 H、Y氏は口ではそんなことをいったが、本心は先を越されてガッカリだった。
「ああ、間に合わなかった。せっかくの研究が」
 ところが、それから五日たった夕方のことだった。K、M氏からまた電話があった。ずいぶん慌てたような声だった。
「すぐに来てくれ」
 駆けつけてみると、理由がすぐに分かった。
 K、M氏の家の屋根から巨大な木が突き抜けて立っており、窓をやぶって枝が外へ伸びている。枝には人間ほどの大きさの果実や野菜がぶら下がっていた。
「留守の間に、急激に成長したんだ。これじゃ完成論文を提出できない」
 それを聞いて、H、Y氏も思い出したように慌てて家に帰って行った。



(オリジナルイラスト)




(未発表童話)