2021年6月20日日曜日

絵と詩 二胡を弾く女性

 

(オリジナルイラスト)


二年前はじめて二胡の演奏を聴きに行った。
ギター、打楽器なども加わっ色彩豊かな演奏だった。
聴きながら昔の中国の山河が心に浮かんできた。
涼しそうな中国の服を着た女性たちが川辺に佇んでいる。
何人かは二胡を持ち、楽しげに弾いている。
その姿が水に美しく映っている。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2021年6月11日金曜日

絵と詩 彫刻家のアトリエ

 

(オリジナルイラスト)


大きな屋敷の地下室に
そのアトリエはあった。
制作される作品はどれも独創的で
コンクールに出展すれば
誰もが驚き、きっと高い評価をするだろう。
でもいまだかつてその彫刻家の作品を
誰も見たものはいない。
今日も薄暗い地下室からは
彫刻を削る音が聞こえてくる。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2021年5月30日日曜日

絵と詩 不気味な木

 

(オリジナルイラスト)


森の中に小さな家
誰が住んでいるのかわからない。
家のそばに大きな木
最初は普通の木だったが、
だんだん大きくなり、不気味な木に変わった。
枝がだらりと垂れ下がり、先端が家の屋根まで伸びている。
家の人はどうしているのだろう
いつも悪い夢にうなされているかもしれない。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2021年5月22日土曜日

絵と詩 新しいねずみ捕り

 

(オリジナルイラスト)


 長いトンネルを走っていた。
 車は少なく、スピードを上げて走っていた。
 あるトンネルを走っていたとき、
 出口の方で何か大きな影が動いた。
 すぐにブレーキをかけたが車は止まらない。
 トンネルを出たとき、大きな網を持った巨大な手が見えた。
 確かにそれは本物の手だった。
 バックミラーを見たとき驚愕した。
 制服が見えたのだ。警官の制服だった。
 次のトンネルにもあんなものが出てきたらどうしよう。
 スピードを落として走った。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2021年5月10日月曜日

オリジナル童話 黒い服を着た旅人

 

(オリジナルイラスト)


 町から遠く離れたある村へ、ひとりの旅人がやってきた。
 黒い帽子を被り、黒い服を着て、村の道をとぼとぼと歩いていた。
「あいつは何者だ」
「どこからやって来たんだ」
「ずいぶん汚らしいやつだな」
 村の人たちは口々にいいあった。
 あるとき畑仕事をしていた百姓が、不思議な光景を見た。
 黒い服を着た旅人が、原っぱにカラスやスズメをたくさん集めて話をしているのだ。みんなまるで人間のようにおとなしく聞いていた。
 何を話しているのか分からない。人間の言葉ではなかった。
 それから不思議なことがおきた。
 毎年、収穫時期になると、カラスやスズメが畑を荒らすのに、その年はまったく被害がなかった。百姓たちはみんな不思議に思った。
 不思議なことはそれだけではなかった。
 いつも家の庭に出している残飯がカラスに食い荒らせれて汚れるのだが、それがなくなったのだ。どの家でも同じだった。
「カラスたちは、ああして木の上で、お腹を空かして泣いているのにどうしてだろう」
 村の人たちにはまったく見当がつかなかった。
 その出来事はとなり村でも起きた。
 その村では野良犬や野良猫が残飯をあさって広場はゴミだらけだったが、黒い服を着た旅人がやってきてからは、村はひとつのゴミも落ちてはいなかった。
「どうしてだろう」
 ある晩、村の男が川のほとりで月をみていたとき、近くで話し声を聞いた。
 不思議に思ってそばへいくと、聖書を手にしたあの旅人が、野良犬と野良猫を集めて話をしていたのだ。
「お前たちも神によって作られたのだ。それならばこの美しい世界を汚してはいけない。たとえ動物だといえ、いつも本能のままで生きているのは愚かしいことだ。お前たちも神の言葉にしたがって、少しは自分勝手な行いは慎むべきだ」
 朝になって旅人はどこかへ去ってしまった。
 男は昨夜の出来事を村の人たちに話したが、誰も信じなかった。
 だけど村ではゴミ箱をあさっている動物は見かけなくなった。

(未発表作品)

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2021年4月30日金曜日

絵と詩 岩山の独房

 

(オリジナルイラスト)


春になって近くの山へ登山に出かけた。
重いリュックを背負って岩山を登っていたとき、
山の頂上からエンジン音が聞こえてきた。
見上げると銀色の宇宙船が着陸していた。
中から二人の宇宙人が出てきて辺りを見回していた。
すぐに俺に気づいて傍へ降りてくると
催涙スプレーをふりかけた。
俺は意識を失って目が覚めたときは岩山の独房に監禁されていた。
登ってきたこの岩山は宇宙人の秘密基地だった。
鉄格子は頑丈でとても逃げられない。
死ぬまでこの中で暮らせというのか。
ある日鉄の扉が開いた。
二人の宇宙人は俺を釈放してくれた。
地球での仕事が終わったのだろう。
すごいエンジン音がすると
宇宙船は大空の中へ消えて行った。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2021年4月20日火曜日

オリジナル童話 モアの鉄船


(オリジナルイラスト)


 ある日、畑で農作業をしていたノアは、空から神の声を聞いた。
「すべての動物と作物を箱船に積み込みなさい。やがてこの地上は大洪水にみまわれる」
 日頃から熱心に神を信じていたノアは神の言いつけに素直に従って、何か月もかかって大きな箱船を作りはじめた。
 近所の人はそれを見ながら、
「ノアは頭がおかしくなった」
といっていつも笑っていた。
 ノアの家の隣にモアという金貸しがいた。
 モアもはじめは皆んなと同じように笑って見ていたが、なんだか心配になってきた。
「もしも本当に大洪水が起きたら、大切な自分の財産を失ってしまう」
 モアは神など信じていなかったが、この村では一番のお金持ちで欲の深い人間だった。
 ある日、船大工を呼んで、大きな鉄の船を作るように頼んだ。鉄の船だったら丈夫で、重い金貨や貴金属をたくさん積めるからだ。
 翌日からモアの家からは溶接の音や鉄板を打ち付ける音が聞こえてきた。
 ノアもモアもいつ来るかわからない大洪水に備えて作業を急いだ。
 やがてその恐ろしい兆候が現れた。
 強風が何日も吹き、雷が鳴りだすと雨になった。
 毎日、雨は降り続き、あちこちの川の水は増水し、やがてあふれ出した。山の木は倒れ、村の畑も家もすべて水に浸ってしまった。
 でもノアとモアは船の中にいて安全だった。
「よかった。神の声は本当だった」
 長雨で増え続ける水は、やがて世界中に広がり海のようになった。人も動物も作物もみんな水に溺れてしまった。
「水が引くまで船の中にいよう」
 ところがノアはあることに気がついた。モアの船が見当たらないのだ。
「どうしたのかな」
 その頃、モアは眠っていた。でも息が苦しくて目が覚めた。
 モアの船は水中にいて、重い金貨や貴金属を積み過ぎたせいで、潜水艦のように水の中をゆらゆら漂っていた。
「困った。これじゃ浮き上がれない。酸欠で死んでしまう」
 でもどうすることも出来なかった。モアの重い鉄船は山の岩の間に挟まって身動きが取れなくなった。
「だれか助けてくれ」
モアはひたすら水の中で叫び続けた。
 そんなことなど知らないノアの箱船は、ただ一艘だけ水の上を漂っていた。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)

(未発表作品)