2021年3月21日日曜日

絵と詩「信号」ガルシン作

 

(オリジナルイラスト)


 帝政ロシア時代、戦争から帰ってきた主人公のセミョーンは、鉄道線路番の仕事にありつき、妻と二人の子供と一緒に暮らします。隣の番小屋にはヴァシーリイという陰気で、社会に対して不満ばかり口にしている男が働いていました。二人はよく土手の上で出会っては世間話をしました。
 あるときヴァシーリイは上司の不当性を訴えるためにモスクワへ直訴に出かけますが、直訴は失敗に終わり、怒り狂ったヴァシーリイは列車の転覆事故を計画します。
 ある日、ヴァシーリイがハンマーで鉄道のレールを取り外している現場を見つけたセミョーンは、大急ぎでレールを修復します。しかし遠くからは列車が近づいてきます。セミョーンは自分の手首をナイフで切り、流れる血でハンカチを染めて赤旗を作り、必死に列車を止めます。(短編小説「信号」フセーヴォロド・ガルシン作)

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2021年3月9日火曜日

絵と詩 メールストロムの旋渦

 

(オリジナルイラスト)


 船はまったく水につかっていましたが、そのあいだ私はずっと息をこらえて螺釘にしがみついていました。それがもう辛抱できなくなると、手はなおもはなさずに、膝をついて体を上げ、首を水の上へ出しました。やがて私どもの小さな船は、ちょうど犬が水から出てきたときにするように、ぶるぶるっと一ふるいして、海水をいくらか振いおとしました。それから私は、気が遠くなっていたのを取りなおして、意識をはっきりさせてどうしたらいいか考えようとしていたときに、誰かが自分の腕をつかむのを感じました。それは兄だったのです。兄が波にさらわれたものと思いこんでいたものですから、私の心は喜びで跳びたちました、――が次の瞬間、この喜びはたちまち一変して恐怖となりました、――兄が私の耳もとに口をよせて一こと、『モスケー・ストロムだ!』と叫んだからです。
 そのときの私の心持がどんなものだったかは、誰にも決してわかりますまい。私はまるで猛烈なおこりの発作におそわれたように、頭のてっぺんから足の爪先まで、がたがた震えました。私には兄がその一ことで言おうとしたことが十分よくわかりました、兄が私に知らせようとしたことがよくわかりました。船にいま吹きつけている風のために、私たちはストロムの渦巻の方へ押し流されることになっているのです、そしてもうどんなことも私たちを救うことができないのです!

    (エドガー・アラン・ポー「メールストロムの旋渦」佐々木直次郎訳より)

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2021年2月28日日曜日

絵と詩 小説 フランケンシュタイン3

 

(オリジナルイラスト)


 わたしは、宿の廊下をしばらく行ったり来たりしながら、敵が身を潜めていそうな物陰を端から調べてまわりました。そのときでした。甲高い悲鳴が聞こえたのです。血も凍るような悲鳴でした。エリザベスがいる部屋からでした。わたしはエリザベスのいる部屋に駆け込みました。
 エリザベスは放り投げられたような格好で、ベッドに横になっていました。息絶え、ぴくりとも動かない姿で。首を垂れ、蒼ざめて苦し気な顔は半ば髪の毛に隠れていました。
(メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」)より

(ボールペン・水彩画 縦25㎝×横18㎝)



2021年2月21日日曜日

絵と詩 小説 フランケンシュタイン2

 

(オリジナルイラスト)


 わたしはスコットランドの北の高地をさらに北上し、オークニー諸島のなかでも本土からいちばん遠い島を仕事場にしました。島には全部で三軒の、見るからにみすぼらしい小屋しかなく、そのうちの一軒が空いていましたから、そこを借りることにしました。
 ある日の夕方、実験室で座っていたときのことです。はっとして耳をそばだてたのは、海岸のすぐ近くで櫂が水をかく音がしたからです。小屋の近くに誰かが上陸しようとしているようでした。
 数分後、小屋の扉が軋みをあげました。誰かがそっと開けようとしているのです。まもなく廊下を歩いてくる足音がして、部屋のドアを開き、恐れていたとおり、あの悪魔が姿を現しました。
 (メアリー・シェリー「フランケンシュタイン」より)

(ボールペン、水彩画 縦25㎝×横18㎝)



2021年2月10日水曜日

絵と詩 小説 フランケンシュタイン

 

(オリジナルイラスト)


 おれは通りすぎようとする子どもを捕らえ、自分のそばに引き寄せた。子どもはおれの姿を見たとたん、両手で目を覆い、悲鳴をあげた。その手を無理やり引き離して、おれは言った。「坊や、大丈夫だ。何もしないから、これから話すことをよく聞きなさい」
 男の子は激しくもがき、「放せ!」と叫んだ。
「坊や、お父さんにはもう会えないんだよ。おれと一緒に来るんだから」
「放せ、化け物!パパは偉いんだからな。フランケンシュタインっていうんだらな」
「フランケンシュタインだと? そうか、おまえはおれの敵の一族なのか。おれが永遠の復讐を誓ったあの男の。ならば、おまえがおれの最初の生贄だ」

            (メアリー・シェリー著「フランケンシュタイン」より)

(ボールペン、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2021年1月30日土曜日

絵と詩 鉄橋に現れたネッシー


(オリジナルイラスト)


人里離れた山の鉄橋に
ある日川の中から巨大な生き物が現れた。
それは恐ろしい目をしたネッシーだった。
遠くから電車が走ってきた。
運転手はまだ気づいていない。
近くまで来たら
慌てて急ブレーキをかけるだろう。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)

 

2021年1月21日木曜日

旧約聖書物語 カインとアベル

 

(オリジナルイラスト)


 アダムとイヴがエデンの園を追われた後に生まれた兄弟であるカインとアベルは、幼いときは仲がよかった。成人してカインは農耕を行い、アベルは羊を放牧する仕事に就いた。
 二人は各々の収穫物を神に捧げたが、神はカインの収穫物を良しとせずアベルの収穫物のみを受け取った。カインは怒りと嫉妬に燃え、ある日アベルを野原に誘い出し殺害する。人類最初の殺人である。カインはこの罪により、エデンの東にあるノドの地に追放された。
 親の愛を巡って起こる兄弟間の心の葛藤、競争心、嫉妬心などをカインコンプレックスと呼ぶ。

(旧約聖書 創世記より)

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)