2021年10月31日日曜日
幻想小説 裏面 アルフレート・クビーン
2021年10月26日火曜日
幻想小説 裏面 アルフレート・クビーン
ペルレは、不可抗力の眠り病に冒された。眠り病はアルヒーフで突然起こり、そこから町と国へ広がっていった。誰一人としてその伝染病にはさからえなかった。まだ活力があると自慢にしていた人も、知らぬ間にどこかで病原菌にとりつかれていた。眠り病の伝染的な性質は、すぐさま認識されたが、しかしどの医者にも治療手段が見つからなかった。家にいられる人はすべて、できるかぎり家にいて、街で疫病に襲われないようにした。たいていの場合、強い疲労感が最初の徴候だったが、そのあと患者は一種痙攣性のあくびに襲われた。眼に砂がはいったように思い、瞼が重くなり、考えごとがすべてもうろうとしてきて、そのときちょうど立っていた場所でそのままぐったり座り込んでしまった。
小説の主人公は、ペルレの街が次第に崩壊していく有様を日々体験していくが、なぜ自分がこの夢の国へ招待されたのか、招待主のクラウス・パテラを探しながら憂鬱な毎日を送る。病身の妻は疲れ果ててある日息を引きとる。
(白水社 幻想小説 裏面 アルフレート・クビーン 第3部 第3章 地獄)
(ボールペン、水彩画 縦25㎝×横18㎝)
2021年10月22日金曜日
幻想小説 裏面 アルフレート・クビーン
夜、ペルレの町の裏通りを通って歩いてゆくのは一つの苦行であった。研ぎすまされた感覚の持主にとっては、恐ろしい深淵がいくつもその顔をのぞかせていた。格子のはまった窓や地下室の通気孔からは、あらゆる音色の歎き声やうめき声が聞こえてきた。半開きになった扉の向こう側でおし殺した溜息が聞こえたりして、思わず絞殺とか犯罪とかを考えずにはいられないようなこともあった。 私が不安にみちた足どりで家路をさして歩いてゆくと、千通りもの、いや一万通りもの嘲りの声が私のあとをついてくるのだった。門道はあんぐりと口をあけて、まるで道をいそぐ人をのみこもうとでもするかのように、その姿をみつめていた。不安にかりたてられて、私はこれまでになんども、家にかえる途中でカフェーへ逃げ込んだことがあった。家内はそのあいだ、可哀想にただひとり家でこわがっていたのだ。
夢の国にやってきた主人公は、このぺルレの町の住民がすべて変わり者の一団であることに驚愕した。なかでもましなのは、極度に繊細な感受性を備えた人々、収集狂、読書狂くらいで、一般の民衆は、見事な飲んだくれ、ヒステリー患者、ヒコポンデリー症、降神術者、向こう見ずな乱暴者、年老いた冒険家、奇術師、曲芸師、政治亡命者、外国で追われている殺人者、贋金作り、泥棒などで占められていた。
(白水社 幻想小説 裏面 アルフレート・クビーン 第2部 第3章 日常生活より)
(ボールペン、色鉛筆、水彩画 縦25㎝×横18㎝)
2021年10月17日日曜日
幻想小説 裏面 アルフレート・クビーン
2021年10月10日日曜日
幻想小説 裏面 アルフレート・クビーン