2020年12月28日月曜日

絵と詩 巨大蟹の襲撃

 

(オリジナルイラスト)


嵐が吹き荒れる極寒の海で
カニ漁に挑む船があった。
強風や荒波、寒さに耐えて
一日中仕事に励んでいた。
ある日、船体が大きく揺れて
巨大な蟹が海面から姿を現し、
漁師たちに襲いかかった。
漁師たちは勇敢に立ち向かった。
もし巨大蟹に打ち勝って、
船に引き上げることができれば、
まさに大漁である。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2020年12月20日日曜日

絵と詩 カトリック教会のクリスマス

 

(オリジナルイラスト)

今年は12月に入ってから強い寒気の流入で、
町はどこもかしこも大雪になった。
教会のアドベントの期間も終わり、
待ちに待ったクリスマスがやってきた。
信者たちは、イエス・キリストの降誕のミサに預かるために
雪の中を歩いてやってきた。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2020年12月9日水曜日

絵と詩 待降節の4本のロウソク

 

(オリジナルイラスト)


 カトリック教会では、降誕祭(クリスマス)までの4週間前はキリストの誕生を待ち望む待降節(アドベント)の期間です。毎週日曜日の主日ミサで1本ずつロウソクに火を着けていきます。
 1、2本目はキリストが来られるのを待ち望みながら心の悔い改めと回心が勧められる時期です。
 3、4本目は主の誕生が最も近付いたことを喜びの心を持って準備する期間です。クリスマスまでにすべてのロウソクに火が灯され、イエス・キリストの誕生を祝います。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2020年11月29日日曜日

絵と詩 聖体秘跡 ワインとホスチア


'(オリジナルイラスト)


 聖餐(せいさん)とはイエス・キリストの最後の晩餐に由来するキリスト教の儀式。典礼的会食。
 カトリック教会では「聖体秘跡」と呼ばれ、パンとワインがイエスの体と血に変わり(聖体変化)、それを信者が分け合うこと(聖体拝領)がミサの中心です。
パンはホスチア、オブラートと呼ばれる薄焼きのものが使われます。
 昔は、パン(ホスチア)をカリス(銀製のグラス)に入ったワインに少し浸して拝領していましたが、現在はパンのみを拝領します。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



 

2020年11月20日金曜日

絵と詩 教会の結婚式


(オリジナルイラスト)


町のカトリック教会で
結婚式が行われました。
新郎新婦が入場するとき
オルガン演奏による
ワーグナーの結婚行進曲が流れます。
誓いの言葉、指輪の交換、結婚証明書へのサイン、
これらをすべて済ませて
二人は祝福されてにこやかに教会から出て行きます。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




 

2020年11月10日火曜日

絵と詩 修道院の庭で遊ぶ天使

 

(オリジナルイラスト)


静かな修道院の庭で遊んでいるのは
天国からやって来た天使たちです。
みんなお得意の楽器を鳴らして楽しんでいます。
朝のお祈りを済ませて庭を散歩をしている
シスターたちの耳にも音楽が聴こえてきます。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2020年10月31日土曜日

絵と詩 山のアトリエ

 

(オリジナルイラスト)


そのアトリエは山の中にあった。
二階建ての質素な家で、そばに湖があり、
冬になると湖の水はすっかり凍ってしまう。
ひとりの絵描きが住んでいて
毎日楽しく絵を描いている。
ここでは時間もゆっくりと進むから、
大作の絵でも数か月ほどで出来てしまう。
誰かに自分の絵を売ることもない、
ただ自分のためだけに描いている。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2020年10月20日火曜日

絵と詩 電気クラゲ雲に襲われる町

 

(オリジナルイラスト)


大気の状態が非常に不安定になり、
空は見る間に真っ黒になった。
クラゲそっくりな巨大な雲が現れ、
バチバチと鋭い火花を散らしながら
小さな町を襲った。
激しいひょうと突風で町は大混乱に陥った。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2020年10月10日土曜日

絵と詩 怪物に追われる

 

(オリジナルイラスト)


ビットコイン投資で億り人になり、
1か月間のヨーロッパ旅行へ出かけた。
ドイツの古城を見学にトレールバイクで山を登っていくと、
古い映画で見たことがある古城があった。
お城の中に入っていくと、実験室があり、後ろの部屋から物音がする。
部屋のドアを開けたのが不運だった。そこには怪物がいたのだ。
慌ててお城から逃げ出したのだが、
何度もエンストして往生した。
おまけに天気は悪くなり、雷が鳴り始めた。
後ろからは怪物が追いかけてくる。
激しい雨の中急いで降りて行った。
山を降りると雨は止んだ。
怪物の姿も見えなかった。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2020年9月30日水曜日

絵と詩 いろんな飛行船

 

(オリジナルイラスト)

9月の爽やかな朝
二階の窓を開けると
いろんな飛行船が浮かんでいた。
クジラ、UFO、魚の飛行船。
誰もいない静かな砂浜は
まるで祭りだ。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2020年9月24日木曜日

絵と詩 幽霊ホテルで一泊

 

(オリジナルイラスト)


夏のキャンプの帰り
エンジントラブルで
山の中で車が動かなくなった。
山道の向こうにホテルを見つけたので、
車を押して駐車場まで行き、フロントへ行った。
ホテルは営業中で二階の部屋を貸してくれた。
ずいぶん古びた建物だったが、文句もいえない、
その夜はホテルで一泊することになった。
宿泊客は私ひとりだけで
薄暗い電灯の下で夕食をとった。
夜眠っていると、どこからか奇妙な笑い声や足音が聞こえてきた。
壁に掛かった絵がぐらぐら揺れたり、
金縛りになって身体も動かない。
おかげでぜんぜん眠れなかった。
翌朝早く、そのホテルから出て行った。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2020年9月16日水曜日

絵と詩 蜘蛛と夏の日差し

 

(オリジナルイラスト)


今年の夏はずいぶん暑かった。
高原の草むらに巣を張った蜘蛛は
毎日強い日差しを受けて喉はカラカラだった。
誰か水をくれないか
このままじゃ日干しになってしまう
雨がまったく降らないので、
蜘蛛はたまりかねて日陰に引っ越していった。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2020年8月31日月曜日

絵と詩 高原の朝食

 

(オリジナルイラスト)

夏の朝の高原は素晴らしい。
清涼な空気を吸いながら朝食をとる。
今日も朝日が眩しく照っている。
緑の牧場を見ながら
今日はどこまで散歩に出かけようかと考えている。




2020年8月21日金曜日

天地の創造 光あれ


(オリジナルイラスト)


 初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。神は言われた。
「光あれ。」
 こうして、光があった。神は光を見て、良しとされた。神は光と闇を分け、光を昼と呼び、闇を夜と呼ばれた。夕べがあり、朝があった。第一の日である。

                         (旧約聖書 創世記から引用)



2020年8月13日木曜日

絵と詩 砂漠のアイスクリーム売り

  

(オリジナルイラスト)


ブルドーザーに冷蔵庫を積み込んで、
アイスクリームの移動販売をはじめた。
砂漠は広くていつも猛暑だから、アイスクリームは飛ぶように売れる。
ラクダに乗ったアラビアの商人たちがいつも買ってくれる。
砂漠のあちこちにオアシスがあるから
涼しいヤシの木の下で、
冷たい井戸水を飲みながら毎日仕事に励んだ。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)



2020年7月31日金曜日

絵と詩 小さな島でキャンプ


(オリジナルイラスト)


ヨットに乗って南の海を旅していたら
ヤシの木一本だけ生えている小さな島を見つけた。
長い航海で陸地に上がったことがなかったので
さっそく上陸するとテントを張った。
夕食のおかずも釣り上げて
夜は揺れない布団の中でぐっすり眠った。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)
 



2020年7月23日木曜日

創作聖書物語 アダムとエバのその後

 エデンの園を追われたアダムとエバは、歩き疲れて小川のほとりの草の上に座り込んだ。二人は深いため息をつきながらやがて話はじめた。
 アダムが先に切り出した。
「どうして蛇の誘惑なんかに乗ったのだ。あれほど取ってはならない木の果実を食べてしまうなんて。これから先どうやって生きて行くんだ」
「あなただって食べたじゃない。あの木が善悪の知識の木だってことを知ってたくせに。最初に神様からきつくいわれたのはあなたよ」
「エバ、お前が悪いんだぞ、お前があまりしつこく勧めるものだから仕方なく食べたんだ。おかげで楽園から追い出されて、永遠の命も失ってしまった」
 二人は追われてきたエデンの園の方を振り返った。
 楽園の中は光が満ちていて、いろんな動物や、おいしい果物の木がたくさんなっていた。
「もう一度、あそこに戻れたら、毎日あくせく働かなくても食料には困らないし、のんびり楽しく暮らせたのだ。永遠の命も保証されていたのに」
「いまさら戻れないわ。さあ行きましょ」
「どこへいくんだ」
「エデンの園に似た場所を探すのよ」
「そんな場所あるわかないさ」
「見つけるしかないわ」
 二人は立ち上がって歩き出した。三日三晩不眠不休で歩き続けたが、楽園は見つからなかった。荒れ野が遠くまで広がっているばかりだった。二人は空腹のためにすっかり力つきていた。
 ある朝、二人がイチジクの木の下で眠っていると、いつかの蛇が枝から降りてきた。
「わたしもエデンの園から追い出されました。あそこでは動物の中で一番賢いといわれていましたが、いまじゃ、最低の動物になってしまいました」
 アダムとエバは、自分たちをこんな境遇にした憎い蛇を、足でポーンと川の向こうへ蹴とばした。
 二人はまた歩き出した。けれどもエデンの園に似た楽園はまったく見つからなかった。
 雨が降ってきたので二人は松の木の下で休息した。
「どこかに家を建てよう。このままじゃ野垂れ死にするだけだ」
 二人は近くの森の中へ入っていくと、木を伐り、家を建てることにした。そしてそこが二人の住み家となった。
 あるときエバはアダムの子を身ごもった。けれども毎日草や木の根っこばかりを食べていたのでは丈夫な子を産めないと思った。
 ある日、いつかの蛇が木の葉っぱの中から姿を現した。アダムはその日食べ物を捜しに外へ出かけていた。
 蛇はエバのいる窓辺へ近寄ってきた。
「エバさん、顔色が悪いですよ。もっと栄養のあるものを食べないといけません。私はもうすぐ死にます。生まれてくる子供のために私を食べなさい」
 エバは信用の出来ない蛇のいうことをそのときは聞かなかったが、何日かして蛇が本当に死んでしまうと、空腹のせいかすっかり日干しになった蛇を食べてしまった。
 何か月かして男の子が生まれた。その子はカインと名付けられた。
 元気な子だったが、扱いにくいところがあった。
 しばらくして次の子を身ごもった。
 エバは空腹のせいで、また蛇を食べたくなった。
 あるとき蛇を捕らえて食べようとしたとき、アダムに見つかった。
「お前はまた神様の罰を受けるつもりか」
 エバは反省して蛇を食べることをやめた。空腹を我慢しながら子供を産むことにした。次の子も男の子だった。その子はアベルと名付けられた。痩せた子供だったが、その子は従順な子に育った。
                      (旧約聖書 創世記からのパロディ)


(オリジナルイラスト)


(未発表作品)





2020年7月11日土曜日

創作昔話 ふしぎな侍

 むかし、小さな村にひとりの侍がやってきてひっそりと暮らしていた。
 村人は、侍にしてはおとなしい男なのでみんなふしぎに思っていた。
「こんな村にどうしてやってきたんだろう」
「侍のくせに刀を振り回したところをみたことがない」
「病気なのかもしれない」
 村人がいうように、侍はまるで百姓のように質素に暮らしていた。
 村の子供たちが自分の畑の中で遊んでいても怒ることもなかった。刀を見せてほしいといったら親切に見せてやった。
 そのうちに村人はこの男に好感を持つようになった。
 ある日、どこからか人相の悪い男が侍の家にやってきた。
「あんたを見込んで、またやってもらいたい仕事がある」
「おれは、もう足を洗ったのだ。いくら頼まれても引き受けることはできん」
「それじゃ、あんたがこれまでやったことを全部役人にばらしてしまうぞ」
 侍はそれをいわれると断ることが出来なかった。しかたなくその男の頼みを引き受けた。
 男は前金を侍に渡すとすぐに帰って行った。
 侍は仕事を頼まれるたびに、「もうこれが最後だ」とつぶやくのだった。
 ある日の深夜、侍は誰にも気づかれないように刀を携えて家から出て行った。
 明け方になり侍は疲れて帰ってきた。そして死んだように眠った。
 ある日、用事で町へ出かけた村人が、町の悪代官が殺し屋に襲われたことをみんな伝えた。
「凄腕だな。どんな殺し屋だろう」
 町の役人たちは犯人の行方を必死になって追っていた。
 侍は、いつものように畑を耕していた。でも心の中は落ち着かなかった。いつ捕まるかわからない恐怖がいつも侍につきまとっていた。
「この村を出よう」
 侍の暮らしは前とすこしも変わらなかった。
 ある朝、誰にも気づかれないように侍は家から出て行った。
 きれいに耕した畑には一本の苗も植えていなかった。
 村人はいなくなったふしぎな侍のことをいつも口にした。


(オリジナルイラスト)

(未発表作品)





2020年6月30日火曜日

絵と詩 恋の通い道


(オリジナルイラスト)


今夜も月が美しい
森の道はいつものように静まり返っている。
梢の小鳥たちはみんな眠りについている。
薄暗い森の向こうには
明るい光が射している。
白いカーテンがときどき動く。
ひんやりした夏の夜に
あの人は待っている。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)





2020年6月23日火曜日

絵と詩 空から聴こえる風鈴の音


(オリジナルイラスト)


夏のある日、
友達と高台の上で海を見ていたら
どこからか風鈴の音が聴こえてきた。
見上げると空からいろんな風鈴がぶら下がっている。
風に揺られ、風鈴は入り江の中を響きあう。
とても不思議な夏の海の夢。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)





2020年6月10日水曜日

絵と詩 沈みそうなタンカー


(オリジナルイラスト)


いくら石油が必要でも
積み過ぎてはいけません。
船体が見えなくなり
潜水艦になってしまう。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)






2020年5月29日金曜日

絵と詩 白鳥のお城


(オリジナルイラスト)


王様は山の上に巨大な白鳥のお城を建てた。
近い将来、この国が恐ろしい疫病に侵される夢を見たからだ。
けれども市民や大臣たちは、まったく興味を示さなかった。
「王様の道楽がまたはじまった」
そういってみんな馬鹿にしたように見物していた。
数年後、王様が予言したように国外から疫病が入ってきた。
市民たちは疫病で次々に倒れていった。
みんな感染を恐れてじっと家の中に閉じこもっていた。
ある日のこと、空から巨大な白鳥が現れて、ロープを家々に降ろして
次々に市民を助けていった。それは「ノアの箱舟」のようだった。
空を見上げながら市民たちは口々に叫んだ。
「あれは王様じゃないか」
白鳥の頭の窓に姿が見えたからだ。
こうしてたくさんの市民の命が救われた。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)






2020年5月20日水曜日

絵と詩 帽子掛けのある部屋


(オリジナルイラスト)


夏になったらどんな色の帽子をかぶろう。
オレンジ色、赤色、青色、黄色…。
どれも派手だけど
みんなかっこいい。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)





2020年5月10日日曜日

絵と詩 指の長いギタリスト


(オリジナルイラスト)


この指の長いギタリストだったら、
何オクターブの曲でも平気で弾いてみせる。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)







2020年4月29日水曜日

絵と詩 のどかな山の生活


(オリジナルイラスト)


コロナウイルスが住んでる町にも広がって
外出自粛でくたびれた人が
500坪の山林を買って自給自足の生活をはじめました。
ここでは人に会うこともなく、
毎日清涼な空気を吸って、
新鮮な野菜や果物が作れます。
自作したAI搭載のじょうろ飛行機が
毎日気象データを分析して、晴れの日には畑に水を撒いてくれます。
小屋の中にはパソコンもあり、
ツイッターやフェイスブック、ユーチューブをやりながら、
友達と会話をしたり動画をアップしたり、
毎日楽しい日々を送っています。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)





2020年4月20日月曜日

空飛ぶ小鳥屋

 コロナウイルスの影響で、売り上げが激減した小鳥屋の主人が、自作した飛行機を使って商売に出かけることにしました。
 近くの山から枯れ木と竹をたくさん集めてきて、ユニークな組み立て式の飛行機を作りました。
 動力は自転車のペダルを漕いでプロペラを回す仕組みですが、もう60歳を過ぎているのでそれでは体力がもちません。
 そこで思いついたのが、お店の小鳥を両方の翼に紐で結びつけて飛ばせることでした。
 これだったら、小鳥の力を利用して長い時間飛んでいられます。
 一か月後に飛行機が無事に完成しました。
 ある日さっそく組み立て式の飛行機を軽トラックに積んで山へ行きました、
 頂上へつくと、飛行機を組み立てて飛び立ちました。
 風も吹いていたので、気持ちよく離陸が出来ました。
 きれいな山並みを眺めながら、あちこちの町へ行きました。
 町の人たちは、みんな外出を控えて家の中に閉じこもっていたので、珍しい飛行機が飛んできたので窓を開けて見上げました。
 飛行機の両翼に色とりどりの小鳥がくくり付けてあります。
 見ているうちにみんな欲しくなってきました。
「おおーい、一羽くれないか」
「おれにも売ってくれ」
 小鳥屋の主人は高度を下げると、竹ざおを使って小鳥を各家の窓へ降ろしました。みんな小鳥を受け取ると、竹ざおにお金を差し込んで支払いました。
 これだったらコロナウイルスに感染しないので安心でした。
 そうやって野を越え、山を越えていろんな町へ飛んでいきました。
 商売は順調で夕方までにほとんど売れてしまいました。
 でも小鳥の数が減ってしまって、これ以上売ることは無理でした。お店に戻るまではずいぶん距離があるので、飛行機が墜落するかもしれません。
「また明日、商売に来よう」
 小鳥屋の主人は、小鳥がたくさん売れてすっかり重くなった飛行機のペダルを漕ぎながらお店に帰って行きました。


(オリジナルイラスト)

(未発表童話)





2020年4月10日金曜日

絵と詩 薔薇のネクタイ


(オリジナルイラスト)


春になったので、
薔薇のネクタイを着けてみた。
ちょっと派手だけど
蝶のネクタイピンもよく合っている。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)







2020年3月30日月曜日

絵と詩 水族館屋敷


(オリジナルイラスト)


森の小道を自転車で散歩していたら、
奇妙な建物を見つけた。
レンガ作りの家で、魚の絵が描いてあるのだ。
いや違う。ほんものの魚だ。
この家は水族館なのだ。
誰が建てたのだろう。
階段に座って一日中観ていた。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)








2020年3月18日水曜日

空飛ぶ公衆電話

 その公衆電話は国道沿いの公園のそばにあった。
 ずいぶん汚れていてペンキがところどころ剥げていた。
 でも1か月前まではここには草しか生えていなかった。無断で誰かが置いたのだ。
 ある日、通行人が電話をかけにきた。
「よかった、スマホの電池が切れたんだ」
 ドアを開けて受話器を取り、お金を入れてダイヤルを回した。
 突然、公衆電話がガタガタ揺れはじめた。
「な、なんだ。これは」
 エレベーターに乗ったような感じだった。すいーっと公衆電話ごと空の上に吸い込まれた。
 ガラスの外を見た。近くに雲が浮かんでいた。振動は収まったが、公衆電話は通行人を乗せて東の方へ飛んで行った。
 山を越えて海が見えてた。
「すごい、まるで飛行機だ」
 海の上を飛んでいると、またガタガた揺れはじめた。
「たいへんだ。高度が下がっていく」
 料金箱にランプが埋め込まれていてピカピカ光っている。
 無意識に100円硬貨を入れた。助けを呼ぶためだった。
 するとまた高度が上がりはじめた。ゆれも収まった。
「そうか、お金を入れると飛び続けるんだ」
 一日中飛んでいると、やがて公衆電話は帰りはじめた。町が見えてきた。もう夜になっていた。
 公衆電話は公園のもとの場所へ着陸した。
「やれやれ、でも不思議な旅行が出来た。みんなに教えてやろう」
 ある日友達を連れてやってきたが、そこに公衆電話はなかった。
「どこへいったんだろう」
 ある日この公衆電話はとなり町の小学校の近くに立っていた。
 通行人がやってきた。
「こんなところに公衆電話なんてあったかな」
 中を覗いてみた。
「せっかくだ、実家に電話をかけよう」
 お金を入れてダイヤルを回した。
 ガタガタと公衆電話が大きく揺れはじめた。
「なんだ、どうなってるんだ」
 通行人を乗せて空へ飛びあがった。そして西の方へ飛んで行った。
  山のふもとに大きな湖があった。
 公衆電話は、急降下してバシャンと大きな音を立てて湖の中へ潜っていった。
 まるで潜水艦だ。湖の中を走り回ってまた空の上に登って行った。
「驚いた。水の中でも平気なんだ」
 丸一日、空飛ぶ公衆電話に乘って空の散歩を楽しんだ。そして夜になって帰ってきた。 
「いやあ、面白かった、みんなに教えてやろう」
 その噂は町中に広まった。
「一度乗ってみたいな」
 そんなことをいう人が多くなった。
 みんな不思議な公衆電話を捜し始めた。でもなかなか見つからなかった。
 町はずれに一人の発明家が住んでいた。いつも地下の実験室にこもって何か作っていた。地下室はまるで工場だった。いらなくなった古い公衆電話が部屋の隅にたくさん置かれていた。
 発明家は数年前からこの作業に没頭していた。つい先日、第1号を完成して、飛行実験を繰り返していたのだ。
「さて、テスト飛行は無事に終わった。30台も作れば相当の稼ぎになる。自動販売機のように毎日稼いでくれる」
 発明家は昔からUFOの研究をしていたのだが、あるときそれを利用して空飛ぶ公衆電話の制作を思いついたのだ。
 半年もすると、空飛ぶ公衆電話は予定通り30台に増えた。
「さて全国に設置しよう」
 トラックを借りてきて、公衆電話をあちこちに置いた。
 発明家が予想したとおり、公衆電話は町の人に使われて相当の売り上げをあげた。でも心配なことがあった。
 故障して墜落したらどうしよう。考えながらいいことを思いついた。
「緊急用のパラシュートを取り付けよう。これだったら万一のとき大丈夫だ」
 すべての公衆電話にパラシュートを取り付けた。
 問題が解決したので、それからも増産していろんな町に設置し、数年間暮らしに困らないくらい大儲けをした。でもある日発明家は逮捕されてしまった。
 航空法違反と違法設置物違反の罪だった。
 刑期が終わるまで、みんな乗れなくなった。


(オリジナルイラスト)


(未発表童話)






2020年3月8日日曜日

絵と詩 芸術家の家


(オリジナルイラスト)


森の中に青い屋根の家がある。
その家に芸術家が住んでいる。
毎朝、散歩から帰ってくると、
楽器を練習し、絵を描くのだ。
ときどきピアノの鍵盤の道を行ったり来たりしながら
作曲のアイデアなんかも考える。
これまで誰もこの家にやって来た人はいない。
一度この家を訪問してみたい。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)





2020年2月27日木曜日

絵と詩 海の見える喫茶店



(オリジナルイラスト)


春のある朝、自転車で海へ行った。
浜辺に白い喫茶店があった。
お客がいない静かな店だった。
モーニングコーヒーを飲みながら
海に浮かぶヨットを見ていた。
どこからやって来たヨットだろう。
オレンジ色の船体が美しい。
ヨットの人も浜辺を見ながら
モーニングコーヒーを飲んでいるのだろう。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




 

2020年2月17日月曜日

カニの建てたお城

 むかし、イギリス南西部のウエイマスの砂浜に、たくさんのカニが楽しく暮らしていました。
 カニたちは、丘の上に建っているお城を見ながら、
「どうだい、おれたちもあんなりっぱなお城をたてようじゃないか」
「そうだな、やってみよう」
 ある日カニたちは、カニの大工さんと相談して作りはじめました。
 砂浜の砂をかき集めてきて、高く高く積みあげていきました。
 波で押し流されないように、海から離れた場所に作りました。
 一か月ほどして、とうとうお城ができました。
 カニたちはお城の中に、イスやテーブルを運んでワインで乾杯しました。
「思ったよりりっぱなお城が出来た。さて、よそ者が来ないように毎日交代で見張りをしよう」
 作業のあいだヤドカリたちがじっと見ていたからです。 
 お城はずいぶん頑丈で、風が吹いてもびくともしません。
 カニたちはお城の中で昼寝をしたり、チェスやトランプをしたり、楽しく暮らしていました。
 ところがある日、空が曇ってきて大粒の雨が降ってきたのです。
 またたく間に大降りになりました。
「逃げろ!」
 昼寝をしていたカニたちは、急いでお城から出ました。雨のせいでお城はつぶれてしまったのです。
 カニたちはがっかりしましたが、
「今度は雨が降ってもつぶれないお城を建てよう」
 カニたちはみんな相談をはじめました。
 ある日、岩場を散歩していたカニがお城を建てるのに都合の良い場所を見つけてきました。
「むこうの岩場に洞穴がある。あの中に建てようじゃないか。雨が降ってもだいじょうぶだ」
 みんな賛成しました。
 ある日お城作りを開始しました。
 洞穴の中は涼しくて、作業はずいぶんはかどりました。
 雨が降ってきても大丈夫なので、予定より早く完成しました。
 カニたちは、またイスやテーブルを運んでチェスやトランプで遊びました。
「どうだい、洞穴の中はよく音が響くから、音楽会をやらないかい」
「そうだ、演奏家を招待しよう」
 お声がかかって、カニの演奏家がたくさん呼ばれました。
 ギター、リュート、マンドリンのアンサンブルがお城のホールで演奏されました。
 ホールはずいぶん音響がよくてみんな幸せそうに耳を傾けていました。
 あるときは、パイプオルガンが運ばれてきて壮大な演奏会が行われました。
 洞穴の中に厳粛な音色が響き渡りました。
「お城をもっと大きくしよう。オーケストラの演奏も聴いてみたい」
 カニたちは、バッキンガム宮殿に負けないくらいのお城をつくりはじめました。


(オリジナルイラスト)


(未発表童話)





2020年2月8日土曜日

絵と詩 山茶花の静物画


(オリジナルイラスト)


久しぶりに描いた花の静物画です。
山茶花に見えるでしょうか。
描いてる間にずいぶん花が散りました。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)




2020年1月31日金曜日

鳩時計屋敷の作曲家

 森の中に風変わりな屋敷があった。大きな木に鳩時計がぶら下がっていて誰か住んでいるのだ。針もちゃんと動いている。森の動物たちはみんなそれを見て時間を知っていた。
 夜になると鳩時計屋敷に火が灯る。中でギターやマンドリンの音色が聴こえてくる。
 ある日の夕方、遠い土地から旅人がこの森へやってきた。
「変な家だな。明かりがついているから、誰か住んでいるのだ」
 旅人は今夜泊めてもらうことにした。
「すみません。すっかり暗くなって道がわかりません。泊めてもらえますか」
 すると屋敷のドアが開いて、男が出てきた。
「どこからやってきたんだ。たいしたもてなしはできないが、よかったら入ってくれ」
 親切な男だった。屋敷の中は居心地がよかった。ベットもあるし、台所もある。机の上に楽器が置いてあり、楽譜が山のように積まれていた。男は夕飯を作ってごちそうしてくれた。
 男は作曲家だった。でも曲が売れないためにこの鳩時計屋敷の仕事をしているのだ。
 毎日の仕事を話してくれた。普段は時計の歯車に油を差したり、時間に狂いがないか調整したりするのだが、一番骨が折れるのは、おもりを引き上げる作業だった。この仕事は大変な力仕事だった。十日に一度はやらないといけない。それらの仕事が終わると、作曲の仕事をするのだ。でもこの森の中ではだれも楽譜を買ってくれない。
「じゃあ、お礼に、あなたの書いた曲を世間に広めてあげましょう」
「え、本当かい」
 男は自分の書いた曲を弾いてくれた。なかなか印象的な曲だった。旅人はこれらの曲ならいろんな町の楽譜店で売れると思った。
 朝になり、旅人は出て行った。リュックサックにたくさんの楽譜を入れていた。
 旅人がいなくなると、男はいつものように鳩時計屋敷の仕事をはじめた。いつも油に汚れて仕事をしながらいつか自分の曲があちこちの音楽ホールで演奏されるのを夢見ていた。
 ある日、旅人は町へやってきた。町の公園で楽譜を取り出してリコーダーで吹いていると、楽譜屋の主人が偶然通りかかった。
「なかなか魅力的な曲じゃないか。誰が書いた曲だ」
 旅人は鳩時計屋敷の作曲家のことをいった。でもぜんぜん聞いたことがない人物だった。
「その楽譜を少し買ってあげよう。お店にプロの演奏家が楽譜を買いに来るので、その楽譜も売れるだろう」
 楽譜屋がいったように演奏家たちは、無名の作曲家の楽譜を眺めて気に入り買っていった。
 ある日、町のコンサートへ演奏を聴きにやってきた音楽好きな資産家が、無名の作曲家の作品を聴いて大いに満足した。
「どこに住んでいる人かな。一度会って話がしたい」
 演奏家から楽譜屋の場所を教えてもらって、ある日出かけて行った。
「わしはよく知らないんだ。旅人から聞いただけだ」
「その旅人はどこにいるんだ」
「町の公園の後ろの木の下で昼寝をしている」
 資産家は公園へ行って旅人から作曲家の家を教えてもらった。
 ある日資産家は、車で森へ行ってみた。森の中に鳩時計の変わった家があった。窓が開いていたので声をかけてみた。
「おおい、いるか、おれだ」
 作曲家の男は外で声がするので窓から顔を出した。
「いやあ、お前か、久しぶりだな」
 二人は若い頃、同じ音楽学校の同級生だった。もう二十年近く会っていなかったので、久しぶりに再会して二人とも喜んだ。
 作曲家の男は家の中に招待し、コーヒーを入れて飲みながら思い出話にふけった。
 資産家は、もともと家がお金持ちだったので、暮らしは裕福だったが才能がなく、音楽の道をあきらめたのだ。反対に作曲家は才能があったのだが、ずいぶん貧乏だったので途中で退学したのだった。学生の時にお互いに曲を見せ合っていたので、演奏会で曲が流れたとき、もしやと思ったのだ。
「作風がどこかで聴いたことがあるので、すぐにお前の曲だと分かった。ずいぶん書いてるみたいだな」
「ああ、でも暮らしはあいかわらず貧乏だ」
 そんなことで、資産家は昔の友人の曲を世間に広めようと考えた。
「お金はおれが出してやるから、ここを出て町で活動すればいい」
「本当か、それはありがたい、じゃあ、あとがまを捜すから少しまってくれ」
 話が決まって、翌月に町へ引っ越すことになった。資産家の援助で作曲家の曲はあちこちで演奏されるようになった。


(オリジナルイラスト)


(未発表童話) 




2020年1月21日火曜日

絵と詩 ネクタイとネクタイピン


(オリジナルイラスト)


明日はギター演奏会です。
どんな色のネクタイを着けようかな。
ネクタイピンも選ばないと。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)






2020年1月10日金曜日

絵と詩 伸びすぎた豆のつる


(オリジナルイラスト)


冬に種をまいた豆が
春になってずんずん大きくなった、
旅行に出かけて帰ってくると驚いた。
電線までつる伸びている。
これだけたくさん豆ができたので
近所の人にもわけてあげよう。

(水彩、色鉛筆画 縦25㎝×横18㎝)