2016年2月21日日曜日

気まぐれな鳩時計

 ある家に、正時になっても鳴かない鳩時計がありました。
その鳩時計は、古かったせいもあるのですが、ずいぶん気まぐれだったからです。いつもへんな時間に鳴いたりするのです。
「明日は、正午にバスに乗って友だちに会いにいくからちゃんと教えてくれよ」
 家の主人はいつも庭で仕事をしているので、鳩の声を聞いて時間を知りました。
「わかってますよ。ちゃんと知らせます」
ところが、翌日やっぱり正午になっても鳴かないので、主人はバスに乗り遅れてしまいました。
「やっぱりだ。こんな鳩時計は壊してしまおう」
そういって、オノでたたき壊そうとしたとき、鳩時計がさけびました。
「それはあまりに残酷です。こんどからちゃんと知らせますから、どうかかんべんしてください」
「いつもそうだ。口だけは達者なんだから」
その日はどうにか助かりました。
 ところがある日、主人が腕をかけてシチューを作っていたときです。
「1時間煮込むと、おいしい味になるんだ。時間になったら知らせてくれよ」
鳩時計にいって、庭で仕事をはじめました。
けれども、鳩時計の声を聞いたのはずいぶん遅くなってからでした
あわてて台所へいくと、シチューはみな焦げていました。
「せっかくのシチューがだいなしだ」
おこった主人は、ナタをもってくると、鳩時計を壊そうとしました。
 主人の形相をみて、震え上がった鳩時計は、
「命だけはどうか助けてください。次からはちゃんと知らせますから」
いつものように許してもらいました
 ある日、この家に強盗が押し入りました。
ナイフを突き付けて、眠っていた主人をたたきおこしました。
「金めのものをよこせ」
主人はすっかり気がどうてんしましたが、すぐに平常心にもどると、
「うちはびんぼうで金めのものなんてないよ。でも、あの壁にかかっている鳩時計は、むかしお金持ちが使っていたものを質屋で高い値段で買ったものだ。なんならもっていきなよ」
「そりゃ、好都合だ」
強盗はよろこんで、鳩時計を小脇に抱えて家から出て行きました。
「やれやれ、怖い思いをしたが、あの鳩時計と縁がきれてよかった」
ところが、町で強盗はすぐに捕まって、巡査が鳩時計を届けにきてくれました。
「やれやれだ。せっかくいなくなって喜んでいたのに」
主人はもどってきた鳩時計を見ながらがっくりと肩をおとしました。
それからも毎度のこと、鳩時計はでたらめな時間を告げて、主人をこまらせていましたが、ある日、町で新しく時計屋を開店した友だちが、家に遊びにやってきました。
「そうだったのかい。じゃ、わたしが直してあげよう」
主人のはなしをきいて、友だちはすぐに修理してくれました。
歯車が錆びついていたのと、油が切れていたのが原因でした。
「これでもう大丈夫だ」
それからはこの鳩時計は、いつもきちんと正確な時間を知らせるようになりました。
だけど、本来気まぐれなので、ときどきはへんな時間に鳴くこともありました。






(つるが児童文学会「がるつ第31号」所収)



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