2015年7月21日火曜日

砂漠の仲間

 焼けつくような砂漠の道を、ラクダにのった商人が旅をしていました。
「ああ、水が飲みたい。水はどこだ」
 ラクダも長旅ですっかり疲れているのか、
 「足が痛い、どこかで休みたい」
とよろよろと歩いていました。
 あるとき、遠くにヤシの林を見つけました。
「あそこで、休むとしよう」
「水もあるかな」
 ところが、行けども行けどもヤシの林は遠のくばかり。
「蜃気楼だ」
「がっかりだ」
 ラクダは、動かなくなりました。
「こら、こんなところで立ち止まっていたら、死んでしまう。はやく水のあるところに行かないと」
「それなら、俺の荷物を持ってくれ」
「ラクダのくせにもんくいうな」
「じゃ、もう歩かない」
 しかたがないので、荷物を持ってやりました。
 やがて、またヤシの林がみえました。
「あれもまた蜃気楼かな」
「どうでしょう。いってみますか」
 歩いて行くと、まさしくヤシの林があります。それに小さな井戸も見えました。
「よかった、今夜はあそこで野宿をしよう」
 けれど、ヤシの葉はどれも枯れていて、井戸も空っぽです。
「ああ、がっかりだ。こんどは、おまえが荷物をもってくれ」
「いやだな」
 ラクダはもんくをいいながら 仕方なくもちました。
 でも、また立ち止まりました。そして荷物にむかって、
「おい、荷物。お前はいいな、のってるだけだから」
 荷物がこたえました。
「そうだよ。おれは荷物だからね」
 それをきいた商人が怒っていいました。
「そんなことあるかい。困っているときはお互いさまだ。こんどはお前がおれたちをせおってくれ」
 荷物は困った顔をしましたが、
「じゃあ、仕方ない。せおってあげるよ」
といって、らくだと商人をせおって歩きだしました。
 でもしばらく行くと、荷物はくたびれて、しゃがみこんでしまいました。
「もうだめだ。かわってくれ」
 こんなことをしていると、だれもせおいたくありません。
「どうだい、ジャンケンして、負けたものが1キロづつ歩いたら」
「そうしよう」
 三人はジャンケンをしました。
「かった」
「かった」
 負けたのは商人でした。
「しかたない」
 そういって、らくだと荷物を背負って歩きました。
1キロ歩くと、またジャンケンして今度は、荷物が負けました。次はラクダでした。
三人とも、そうやってかわりばんこに歩きました。
 やがて、みんなくたびれて、ばったりと砂の上に倒れこんでしまいました。
みんな死にそうなようすで、むこうの丘をぼんやりと見たときです。商人が叫びました。
「みんな起きろ、町が見えるぞ」
 三人は、生き返ったように、町の方へかけていきました。





(つるが児童文学会「がるつ第36号」所収)


0 件のコメント:

コメントを投稿