焼けつくような砂漠の道を、ラクダにのった商人が旅をしていました。
「ああ、水が飲みたい。水はどこだ」
ラクダも長旅ですっかり疲れているのか、
「足が痛い、どこかで休みたい」
とよろよろと歩いていました。
あるとき、遠くにヤシの林を見つけました。
「あそこで、休むとしよう」
「水もあるかな」
ところが、行けども行けどもヤシの林は遠のくばかり。
「蜃気楼だ」
「がっかりだ」
ラクダは、動かなくなりました。
「こら、こんなところで立ち止まっていたら、死んでしまう。はやく水のあるところに行かないと」
「それなら、俺の荷物を持ってくれ」
「ラクダのくせにもんくいうな」
「じゃ、もう歩かない」
しかたがないので、荷物を持ってやりました。
やがて、またヤシの林がみえました。
「あれもまた蜃気楼かな」
「どうでしょう。いってみますか」
歩いて行くと、まさしくヤシの林があります。それに小さな井戸も見えました。
「よかった、今夜はあそこで野宿をしよう」
けれど、ヤシの葉はどれも枯れていて、井戸も空っぽです。
「ああ、がっかりだ。こんどは、おまえが荷物をもってくれ」
「いやだな」
ラクダはもんくをいいながら 仕方なくもちました。
でも、また立ち止まりました。そして荷物にむかって、
「おい、荷物。お前はいいな、のってるだけだから」
荷物がこたえました。
「そうだよ。おれは荷物だからね」
それをきいた商人が怒っていいました。
「そんなことあるかい。困っているときはお互いさまだ。こんどはお前がおれたちをせおってくれ」
荷物は困った顔をしましたが、
「じゃあ、仕方ない。せおってあげるよ」
といって、らくだと商人をせおって歩きだしました。
でもしばらく行くと、荷物はくたびれて、しゃがみこんでしまいました。
「もうだめだ。かわってくれ」
こんなことをしていると、だれもせおいたくありません。
「どうだい、ジャンケンして、負けたものが1キロづつ歩いたら」
「そうしよう」
三人はジャンケンをしました。
「かった」
「かった」
負けたのは商人でした。
「しかたない」
そういって、らくだと荷物を背負って歩きました。
1キロ歩くと、またジャンケンして今度は、荷物が負けました。次はラクダでした。
三人とも、そうやってかわりばんこに歩きました。
やがて、みんなくたびれて、ばったりと砂の上に倒れこんでしまいました。
みんな死にそうなようすで、むこうの丘をぼんやりと見たときです。商人が叫びました。
「みんな起きろ、町が見えるぞ」
三人は、生き返ったように、町の方へかけていきました。
(つるが児童文学会「がるつ第36号」所収)
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