「ああ、明日から大雪だ。どこか泊めてくれる家はないかな」
あちこち家をまわりましたが、どこも泊めてくれません。仕方がないのでその夜は木の下で寝ました。
朝、あまり寒いので飛び起きると、雪が1.5メートルも積もっていました。
「こんな大雪ははじめてだ。どこにも行けない」
一日何もしないでじっとしていると思いつきました。
「そうだ雪の家を作ろう」
雪を固めで穴を掘り、六畳くらいの広さの雪の家が出来ました。木の枝を折って焚き木にしました。
「これでどうにか住めるな。暖もとれる」
一週間ほど雪の家で暮らしてから、仕事を探しに出かけました。でもどこも雇ってくれません。
「ああ、お腹は減るしどうしたものだろう」
ある夜、眠っているとどこからか声が聞こえてきました。
「仕事が欲しいのですね。じゃあ、明日の朝、ご紹介しましょう」
「本当ですか」
声はすぐに消えてしまいました。
朝になって、凄い音で目が覚めました。
「なんだー、除雪車の音だ!」
雪の家を出てみると、夜の間にまた大雪が降ってたくさんの除雪車が雪をかいていました。
一台の除雪車がやってきて、
「あんた、大型特殊免許持ってるか」
「えっ、どうして」
「人手が足りないんだ」
「ああ、そうだ。20歳のとき免許を取ったんだ。持ってます」
「じゃあ、あの除雪車に乗ってくれ。終わったら給料払うよ」
そんな訳で仕事が見つかりました。
除雪作業は5日ほどかかり、その分の給料をちゃんともらいました。
幸運にもその冬は大雪続きで、そのたびに除雪のアルバイトをしました。
やがて春がやってきました。
暖かくなっていい季節ですが、雪の家は溶けてしまいました。
「ああ、また家を探さないといけない」
木の下で野宿する生活が続きました。
ある日町へ行くと、ネットカフェに入りました。
パソコンをいじっていると、仮想通貨取引所のホームページを見つけました。
「こんな通貨は絶対に値上がりしないな」
思っていると、どこからか声が聞えてきました。
「買っておきなさい。数年後にはあなたは億万長者ですよ」
以前も声がいったとおり仕事がみつかったので、宝くじを買うような気持ちで5000円分のビットコインを買いました。その時のビットコインの価格は10円でした。
数年後、夢のようなことが起こったのです。家電店のテレビを観ていたら、ビットコインの価格が猛烈に値上がりしているニュースが流れたのです。それも信じられないような価格で。
「わおー、総資産が10億円になってる」
いままで雪の家に住んだり、木の下で野宿していた男の人でしたが、いまは故郷に帰ってりっぱな豪邸を買って贅沢に暮らしているそうです。世の中にはこんな幸運な人もいるのです。
(オリジナルイラスト)
(未発表童話です)
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