「かかしの旦那、きょうも暑くって仕方がありませんね。どうですか、川へ水浴びに行きませんか」
かかしは自分の汚れた着物を見ながら、
「そりゃいい、あんたにおぶっていってもらおうかな。ついでに着物も洗うことにしよう」
「それじゃ、行きましょう」
さるに背負ってもらって川へ行きました。
川へやって来ると、さっそく飛び込みました。水の中は冷たくてとっても気持ちがいいのです。
かかしは長い間着物を洗ったことがなかったので、さるにゴシゴシ洗ってもらいました。
田んぼへ戻ってくると、かかしはさっぱりしたようすで同じ場所に立ちました。さるも山へ帰っていきました。
しばらくしてから、かかしは気がつきました。
「しまった、かさを忘れてきた」
こんなひざしの強い日に、かさをかぶっていないと日射病になってしまいます。
そのときです。農家から飼い猫がやってきました。
飼い猫は、かかしを見てへんな顔をしました。
「かさをどうされました」
「川へ水浴びにいって忘れてきたんじゃ」
「それじゃあ、取りにいってあげましょう。これからフナを取りにいくところなんです」
「たのむよ」
夕方になってから、飼い猫はかさを持ってきてくれました。
(自費出版童話集「本屋をはじめた森のくまさん」所収)
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