2017年7月9日日曜日

かかしの水浴び

 夏のひざしがとてもまぶしい日のこと、田んぼの中に突っ立っていたかかしのところへ、山からさるがやってきました。
「かかしの旦那、きょうも暑くって仕方がありませんね。どうですか、川へ水浴びに行きませんか」
 かかしは自分の汚れた着物を見ながら、
「そりゃいい、あんたにおぶっていってもらおうかな。ついでに着物も洗うことにしよう」
「それじゃ、行きましょう」
 さるに背負ってもらって川へ行きました。
川へやって来ると、さっそく飛び込みました。水の中は冷たくてとっても気持ちがいいのです。
 かかしは長い間着物を洗ったことがなかったので、さるにゴシゴシ洗ってもらいました。
 田んぼへ戻ってくると、かかしはさっぱりしたようすで同じ場所に立ちました。さるも山へ帰っていきました。
 しばらくしてから、かかしは気がつきました。
「しまった、かさを忘れてきた」
 こんなひざしの強い日に、かさをかぶっていないと日射病になってしまいます。
 そのときです。農家から飼い猫がやってきました。
 飼い猫は、かかしを見てへんな顔をしました。
「かさをどうされました」
「川へ水浴びにいって忘れてきたんじゃ」
「それじゃあ、取りにいってあげましょう。これからフナを取りにいくところなんです」
「たのむよ」
 夕方になってから、飼い猫はかさを持ってきてくれました。






(自費出版童話集「本屋をはじめた森のくまさん」所収)





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