2019年6月30日日曜日

絵と詩 アイスクリームのお店





夏のある日、山へ絵を描きに行った。
清涼な空気を吸いながら、高原の景色を描くためだった。
花の匂いを嗅ぎながら山道を登っていた。
太陽が眩しくて、喉が渇いてきた
行く手にお店が見えてきた。アイスクリームのお店だった。
「あそこで少し休んでいこう。ついでにお店の絵も描いていこう」

(色鉛筆、水彩画 縦25㎝×横18㎝)






2019年6月20日木曜日

絵と詩 水槽



 
 その家の水槽にはいろんな物が入っている。
 珍しいお客に魚たちはびっくり。
 次はどんな物が入ってくるのか
 みんないつも落ち着かない。

(色鉛筆、水彩画 縦25㎝×横18㎝)






2019年6月10日月曜日

記憶がよみがえった男

 目が覚めるとおれは南洋に浮かぶ小さな孤島の砂浜の上で眠っていた。荷物ひとつなく、どうしてこんな島に来たのか分からなかった。
 ズボンのポケットに手帳が入っていて、読んでいるうちに忘れていた記憶が次第によみがえってきた。手帳にはやたらに数式が書いてあり、グラフや図も描いてあった。
「そうか、思い出してきたぞ。おれは瞬間移動装置の開発をしてたんだ。どんな物でも自由に空間を移動できる新装置だ」
 五年前に、この装置の論文を学会に発表して、勤めている自分の会社の実験室でグループを組んで開発をしていたのだ。海外にも実験室を設けて、この装置で移動実験を繰り返していた。会社からは多額の実験費用を貰っていた。もし実用化出来れば、会社にとって大きな利益になる。
 最初は物品による移動実験を何度も実施していた。それに成功すると、動物による実験を開始した。そして最近のことだった。とうとう人間による移動実験に入ったのだ。モルモットは自分自身だった。
「わかったぞ。空間を移動していたとき、何かの手違いでこの島へ送られたのだ」
 手帳を詳細に読んで、忘れていた記憶をすべて思い出した。そして自分が工学技術者であることも分かった。
「でもどうしてこんな知らない孤島へ来たのだろう」
 数日間、考え続けている間にその謎が解けた。
「緯度、経度のダイヤル設定を間違えたんだ。手帳には6月5日14時00分にグアムへ移動。と書いてある。グアムの受信側の装置へ移動するはずだったのが、少しのずれでこの島へ来たのだ。そうだとすれば、この孤島はグアムからそんなに離れていない」
 この孤島から脱出できればグアムへ行き、施設の送信装置を使って再び空間を移動してもとの場所へ帰れるのだ。
「でもどうやってこの島から出ようか」
 方法はただひとつ、船か飛行機を見つけて救い出してもらうしかない。ポケットに煙草とライターが入っていた。
「船を見つけたら手帳を破って紙に火を着けよう」
  食料も水もなく、そんなに長くこんな島にいれるわけもないので、早く船を見つけるしかなかった。まる3日間水平線を眺めていたが、一隻の船も通らなかった。         
 その間、何度も手帳を読み直した。すると手帳の最後のペ-ジに小さな紙がはりつけてあった。
「これは、グアムの実験室の住所だ。電話番号も書いてある。よかった。グアムに着いたら、実験室へ行こう」
  数日後、幸運にも水平線に船が見えた。知らない国の貨物船だった。手帳の空白ページを破って火を着けた。煙をハンカチに包んで、・・・ ーーー ・・・(SOS)と短い煙と長い煙を交互に空へ浮かばせた。
 その煙に気付いたのか、貨物船が島へ近づいてきた。双眼鏡で自分を見つけて救ってくれたのだ。
 それから数日後、グアムの港へ入港し、実験室へ行くことができた。研究員たちはみんな心配していた。
「よく戻ってこれたな。でもよかった」
 ダイヤル設定ミスのことをみんなに話してから、再び移動装置を使って自分の会社の実験室へ帰ることが出来た。



(オリジナルイラスト)


(未発表童話)